【主張】新人定着へ能開主義回帰

2025.07.24 【主張】
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 人手不足の解消というより新陳代謝を急ぐ有力企業によって、新卒採用市場は今やVIPルームと化した。20万円台半ばの初任給は最低レートとして高過ぎるし、インターンシップによる先行投資も、付け焼刃ではリターンが望めない。従来以上に新人をいかに定着させ、育て上げるかが問われるなか、一部では能力開発主義を強化する取組みも増えてきている。

 福祉用具のレンタル・販売事業を営む㈱ヤマシタは昨春、人事処遇制度を一新し、新人が一人前になるまでに身に着けるべき能力を職種別に整理した(7月21日号8・9面)。1~3等級の間は共通の基準で評価を行い、合計点を基準年収や昇格審査とリンクさせる。職場の先輩を育成役に任命し、成長度を日々確認させることで、人材育成の実効性も確保している。

 介護大手のSOMPOケア㈱では、新卒総合職向けに専用の区分を設けている。5年目までに4割近くが離職する状況を改善するため、介護福祉士の取得を促す一方、年5000円の自動昇給分を確保した。100種類を超える研修コンテンツを提供しつつ、晴れて早期に資格を取得した人材には“飛び級”を行う。

 2年前に新人事制度を導入した建設コンサルタント大手の㈱建設技術研究所は、総合職・非管理職層を「技術士をめざす体系」と位置付けた。資格取得を個人に委ねていた慣行を改め、試験合格に求められる全27項目のスキル修得を人事考課や昇格と連動させた。管理職層への登用は、技術士取得を原則としている。

 物価上昇を超えて“見習い中の賃金”を引き上げる措置は、職務給の発想とは対極に位置する。高騰しているのは「新規学卒者」という属人的要素の価値であり、彼らが入社直後に担う職務の価値ではないだろう。

 「新卒一括採用+定期昇給」という要員管理手法は本来、一人前への成長を前提とする。成長意欲を持たず、「できない」のではなく「やらない」者に対する昇給は、人への投資でもなんでもない。報酬との連動で成長を実感させる能力開発主義は、人を選べぬ企業にこそ欠かせない。

令和7年8月4日第3507号2面 掲載
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