【主張】初任給高騰は当然の帰結

2023.03.09 【主張】
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 賃上げ機運が高まるなか、大卒初任給の引上げが相次いでいる。自らベースアップを宣言した企業のなかには、来春に向けて一気に25万~30万円とするケースも散見される。建設、運輸、販売などの現場が人手不足に汲々とするなか、未来の基幹人材に投資する意欲も高まっている。

 かつて採用時の水準ではなく「その後の伸び幅」でリードしてきた金融機関も、メガバンクを中心に次々と1万~2万円台の引上げを実施している。24年度からグループ5社で合同採用に取り組むみずほフィナンシャルグループでは、大卒の水準を26万円に設定した。みずほ銀行の場合、前年度から5.5万円の大幅アップになる。

 高騰ぶりがめざましいゲーム業界では昨年、バンダイナムコエンターテインメントとコーエーテクモホールディングスが相次いで29万円に引き上げた(=関連記事)。いずれも年収に占める賞与比率を抑えてまで、5万円超の大幅アップに踏み切った。さらに先月にはセガが24年度の初任給として、前払い退職金を含め30万円とする意向を明らかにしている(=関連記事)。

 所定内給与で約30万円という水準は、たとえば大卒・女性全体の平均賃金と変わらない(令和3年賃金構造基本統計調査=28万8900円)。獲得競争に競り勝つためとはいえ、入社1年目からこの金額を支払い、その後の昇給はどんなカーブを描けるのか。

 ただ、こうした動きが望まれている面もある。物価上昇で生活費が膨らむなか、奨学金を返済している若年層は少なくない。(独)日本学生支援機構のデータによれば、全体の返還者の数は令和2年度末現在で約454万人に及ぶ。就活生が初任給の多寡に目を奪われるのも無理はない。

 従来、大卒・総合職の初任給相場は、日本の雇用システムを象徴する銘柄として機能してきた。ところが今では、勤務地限定区分を設けるのがスタンダードとなり、異動の範囲も世界にまで広がった。募集に当たり、最初に配属される職種・領域を保証する企業も出始めている。従来どおりに無限定人材をプールしていくには、処遇面でプレミアムを付けざるを得ない。

令和5年3月13日第3392号2面 掲載

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