【人材ビジネス交差点】カスハラ対策は記録から/㈱シンカ 代表取締役社長 江尻 高宏

㈱シンカ 代表取締役社長 江尻 高宏 氏
近年、顧客からの過剰なクレームや理不尽な要求が「カスタマーハラスメント(カスハラ)」として社会問題化している。東京商工リサーチが昨年8月に実施した調査によると、直近1年間でカスハラを経験した企業は19.1%に上る。さらにそのうちの13.5%の企業ではカスハラの影響で休業や退職が発生している。一方で、調査対象企業の約7割が対策を講じていないという。
2025年4月には、東京都などで全国初となるカスハラ防止条例が施行された。東京都では中小企業向けの奨励金制度(最大40万円)も創設され、マニュアル整備などの動きも進んでいる。ただ、日々顧客対応に当たる従業員は依然として、時に心ない言動の矢面に立たされている。
こうした心理的負担は従業員満足度(ES)の低下・離職にもつながりかねない。安心して働ける職場をつくるためには、組織的な対策とともにテクノロジーの活用が鍵となる。
顧客対応のチャネルが多様化しているものの、電話によるやり取りは依然として多く、「言った・言わない」の認識の齟齬がトラブルの火種となるケースも多い。こうした課題解決をめざして開発したのが、シンカのクラウド型コミュニケーションサービス「カイクラ」である。
カイクラは、着信時に顧客情報を自動表示し、通話の録音や文字起こしを行う。さらに、会話中の感情をAIが解析し、怒りの兆候をラベリングするなど、記録と情報共有を効率化する機能を備える。
今年5月には、電話・FAXとコンピューターシステムを統合したCTI機能や、録音機能を単体で利用できる新プランも導入し、カスハラ対策など企業の多様なニーズに対応する体制を整えた。
これにより管理者は現場の状況を把握しやすくなり、従業員への迅速なフォローが可能となる。結果として心理的安全性の向上、信頼関係の構築、ESや定着率の改善につながっている。
「通話内容が記録されている」という安心感は、現場で働く従業員を守る盾となる。とくに電話応対に不安を感じやすい若手社員には心強い要素であり、職場全体の働きやすさが向上したとの声も上がっている。
環境が整うことで、従業員は本来の業務に集中しやすくなり、顧客対応への自信や意識も高まる。管理職も従業員の変化に気付きやすくなり、チームの信頼関係や定着率の向上が期待できる。
カスハラ対策は事後的な対応ではなく、予防と支援を前提とした仕組みづくりが極めて重要だ。人材ビジネスにおいても、記録を起点とした取組みが現場と組織の持続的な成長を支えていく。
筆者:㈱シンカ 代表取締役社長 江尻 高宏【東京】
【公式WEBサイトはこちら】
https://www.thinca.co.jp/