【主張】社労士の「使命」明確化で
第217回通常国会で、社会保険労務士の「使命」規定を新設する社労士法の改正法案が成立した。改正後の第1条では、労働・社会保険諸法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立などに寄与し、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを使命として明記する。
社労士は、主に中小企業における円滑な労働・社会保険手続きや、労務管理の適正化などの面で大きな役割を果たしてきた。一方で、助成金の不正受給への関与などにより厚生労働省から懲戒処分を受けるケースも見られる。こうした社労士の存在は、たとえほんのわずかであったとしても、これまで積み上げてきた社労士制度の信頼を損なうことにもなりかねない。使命規定の新設を契機に、社労士においては改めて、専門的な知識と、高い職業倫理に基づいて業務に励んでもらいたい。
改正後の第1条では、同法の「目的」規定に代わり、「使命」に関する規定を新設。「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もって豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする」と定めた。
さらに第2条で、いわゆる「労務監査」業務を、社労士の業務として明確化した。「ビジネスと人権」への対応も含め、社労士の活躍の場が広がることが予想されるなか、これまで以上に、一人ひとりが高い職業倫理の下で、各業務に取り組んでいくことが求められる。
一方、厚労省によると、今年1~6月に懲戒処分を受けた社労士は3人で、そのうち、被保険者標準報酬月額算定基礎届などに実際よりも低い金額を故意に記入し、事実に反する申請書の作成・事務代理を行った者など2人が「失格」処分となっている。
使命規定の創設により、社労士一人ひとりが「使命」を意識した行動を取り、社労士制度の信頼がさらに高まるよう期待している。