【主張】致し方ない公表基準緩和

2023.04.13 【主張】
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 厚生労働省は、不正受給が問題視されている雇用調整助成金の新型コロナ特例について、企業が自ら労働局に申告し、全額納付した場合には社名を公表しないとする新たな基準を設定した(関連記事=雇調金不正受給 自主申告で企業名公表せず 新たな基準を開示 厚労省)。

 雇用を守るために用意している助成金が、不正に利用されることがあってはならない。厚労省は、抑止のために社名公表を積極的に行ってきたが、明るみに出ていないケースが依然として少なくないと思われる状況下では、迅速な回収を優先し、公表基準を緩和することは致し方ないだろう。

 雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の不正受給については、令和2年9月~3年12月末の期間で計261件、32.3億円に上ったため、厚労省は昨年2月頃から、対応の厳格化に踏み切っている。事前予告なしの立入り調査や、企業名の積極的な公表、都道府県警との連携強化を行っている。ただ、不正受給の発覚はその後も収まらず、昨年12月末までの累計で1221件、187.8億円へと大幅に拡大した。

 厚労省が明らかにした企業名公表の新基準によると、労働局の調査前に自主申告し、返還命令後1カ月以内に違約金や延滞金を含めて全額納付した場合は、原則として公表しない。自主的な申告・返還の申出をしやすい環境の整備が狙いだ。

 新たな公表基準の設定に併せて作成した企業向けリーフレットでは、「(支給取消し額などが100万円未満の場合を除き)自主申告ではない不正受給事案については例外なく事業主名を公表する」点を強調。自社が得た助成金を点検し申告するよう呼び掛けている。不正受給は本来あってはならないが、新基準が周知され、企業による申告・納付が進むことを期待したい。

 一方、実態が受給要件を満たさないことを知っていながら申請を代行するなど、不正に関与した社会保険労務士は、申告の有無や金額の多寡を問わず公表するという。高い専門性が期待される点や、ペナルティーとして5年間の不支給措置を講じる点を考えれば、公表を免れられないのは当然だろう。

令和5年4月17日第3397号2面 掲載

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