【ひのみやぐら】褒めて伸ばす安全衛生活動を
褒められると、誰でも気分がよくなる。たとえあらかさまなお世辞と分かっていても、いわれて気分を害した話はほとんど聞かない。人は誰でも「他者から認められたい」という承認欲求を持つ。「褒める」という行為は、相手の気分をよくするのはもちろん、ヤル気を促すもとになる。職場での人間関係で「褒める」行為をプラスすると、仕事をお願いしやすくなったり、与えたタスクが通常より早く終ることがある。まさに最強のコミュニケーション術といってよい。
一方で、日本には「褒める文化」が浸透しているとはいえない。「見習い」という言葉があるように、昔から日本人の技術習得方法は、師匠の仕事ぶりを見て、自分なりに解釈し盗むもの。手取り、足取り丁寧な言葉で伝えるといった配慮とは縁遠い。上司の丁寧な指導よりも、本人のヤル気に期待するところが大きい。もちろん、現代の産業現場で「言いっ放し」は効果が上がらないうえ、問題であるのはいうまでもない。
さらに日本人は「察し」や「空気を読む」ことを重視し「いわなくても分かるだろう」という気質が強い。さりげなく相手を褒めたり、気持ちを心地よくさせるという技術を持ち合わせている人が少ないように感じる。もう一ついえば、褒めることへの「気恥ずかしさ」もあるだろう。
「人は期待されることによって成長が高まる」という心理をピグマリオン効果という。アメリカの教育心理学者が提唱したものだが、職場での人間関係にも応用できると考えられている。褒めることで相手が期待を膨らますようになり、それに応えようとする気持ちが成長へとつながるのだ。
日常の安全衛生活動に当てはめれば、「清掃を手伝ってくれた」「重い荷物を持ってくれた」といったささいなことでも、リーダーは朝礼などで皆の前で褒めるとよいだろう。褒められた本人としては嬉しいし、継続して行おうと思うに違いない。また、周囲の人も褒められたいがために、真似する効果も期待できる。
不具合を指摘するのと同じくらい、災害防止では良い点を褒めることが大切といえるだろう。