【ひのみやぐら】ヒヤリ体験を責めない

2016.10.15 【社説】

 ヒヤリ・ハット報告活動は、災害の一歩手前となった体験を自分自身の教訓とするだけではなく、職場の仲間と情報を共有し合うもの。安全衛生活動のなかでも重要な位置を占めるのはいうまでもない。職場で盛り上げていきたいところだが、マンネリ気味に陥ったり、提出率が低かったりとなかなか活性化しないで悩んでいる安全担当者も少なくないのではなかろうか。

 ここは、報告する側に立って考えてみよう。ヒヤリ・ハットは、自らのミスや不注意によって起こることが少なくない。「安全に注意せよ」と命じられている職場で、失敗は恥ずべきことと感じるのは、不自然ではないだろう。ミスは誰にも知られたくないもの。人間であるがゆえ、自然に「防衛本能」が働いてしまうことも考えられなくはない。こうして、せっかくの貴重な情報源である、「ヒヤリ体験」が「ヒヤリ隠し」となって、職場の災害防止に生かされないままとなってしまう。

 ヒヤリ・ハット報告活動は、作業者のミスを責めたり、あれこれ言い立てる場ではない。報告を受ける側は、作業者の心理を十分に理解する必要がある。ときには、上司自身が自分のヒヤリ・ハット体験をさらけだすのもよいだろう。〝模範〟を示すことで、提出しやすい雰囲気をつくりだすことが大切だ。

 特集Ⅰで取り上げるJR貨物は、ヒヤリ・ハットを積極的に出してもらうよう、職場の雰囲気づくりに気を配っている。「普段から管理者とコミュニケーションを良くし、話しやすい状況を日常的につくっておく」という。また、教育訓練や点呼の際には「よその現場でこういうことが起きたんだけど、似たようなことはない?」などと問いかけて、情報を上手に引き出している。日常の何気ない会話から、配慮しているのがよく分かる。同社のように、活動を定着させるには、提出しやすい土壌づくりが何より重要ではないか。

 危険な行為だけを取り上げて叱りつけたり、不注意を責めたりしては、活動は停滞してしまう。ヒヤリ・ハット報告活動は、責任追及のために行うわけではない。

掲載 : 安全スタッフ 平成28年10月15日第2268号

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