【主張】若者の自殺率に歯止めを

2017.08.28 【社説】

 政府が、「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。一時3万人を突破していた自殺者数が平成28年に2万1000人台へ低下し、なお減少基調となっていることは極めて喜ばしいが、実は若者の自殺は必ずしも大きく改善していない実態がある。企業経営者はこの状況に真摯に向き合わなければならない。

 大綱でもこの点を強調して注意喚起している。20歳未満の自殺死亡率は自殺者数全体が3万人を超えた10年以降おおむね横ばいが続いている。20~30歳代の死因第1位が自殺であることは変わりなく、自殺死亡率の減少テンポは鈍い。大綱はこの点をもって「非常事態はまだ続いている」と深刻に受け止めている。

 将来の日本を背負うはずの多くの若い力が自殺によって失われていく社会環境を、すぐにでもストップさせなければならない。そのために、企業経営者は何ができるか、個々の状況に応じて具体的対策を検討し、実行に移してもらいたい。

 最低限の対策として着手すべきなのは、長時間労働の是正である。新たな時間外規制案では、特別条項を付加しても年間720時間が上限とされたが、これでは月60時間が可能となってしまう。延長時間数は上限まで設定するのではなく、可能な限り短くする努力をすべきである。

 ストレスチェックによる職場のメンタルヘルス状況の把握と改善も当然実施すべきだ。若者の特徴としてインターネットやSNS上で自殺をほのめかす傾向が強いことにも常に気に留めておきたい。

 見逃してはならないのは、各種ハラスメントであろう。なかでも日常的に繰り返されるパワハラは、多くの若者の心を傷付けて自殺の一因となることがある。管理職への研修や相談窓口の設置も重要だが、上に立つ者は常に愛情をもって若者に接し、危機的状況に陥らないようにしなければならない。

 マクロ経済政策としては、現在の成長戦略を続けて当分の間、雇用改善傾向を維持することが重要である。企業経営者の真摯な取組みが並行して進めば、若者の自殺は防げると考えたい。

掲載 : 労働新聞 平成29年8月28日第3126号2面

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