【主張】難しいハラスメント防止

2022.11.24 【主張】
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 本紙報道(関連記事=SOGIハラ 性自認侮辱による労災を認定 戸籍の性別変更促す 先輩社員発言でうつ病に)によると、心と体の性別が異なるトランスジェンダーの会社員がうつ病を発症したのは、先輩社員からの性自認を侮辱する言動(SOGIハラ)が原因として、神奈川県内の労働基準監督署が労災認定を行っていたという。勤務先の会社は先輩社員に対して言動を改めるよう指導したが、その後も同様の言動が続いていた。

 従業員の精神疾患が労災として認定されれば、使用者が安全配慮義務違反に問われる恐れは高まる。今回の労基署の判断は、企業がハラスメント防止に向けた指導を行っていたとしても、加害者の行為が是正されなければ、労災認定され得ることを示している。企業においては、管理職だけでなく、すべての従業員に対する教育を徹底しておきたい。

 労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止指針では、パワハラの類型の1つである「精神的な攻撃」の例として、相手の性的志向・性自認に関する侮辱的な言動を挙げている。件の労災認定事案では、性自認が女性である会社員に対して、本人の希望に反して先輩社員が「彼」「〇〇君」と呼び続けたことなどを「侮辱」と判断した。

 同社の対応をみると、本人から性自認のカミングアウトを受けた後、配属先の事業所長が関係労働者に対し、会社員を女性として扱うよう指示を出した。「彼」などと呼ぶ先輩社員には、上司が指導を実施。当事者同士が業務上の接点を持たないよう、職務変更も行っている。

 会社側はハラスメントの防止・是正に向けて一定の取組みを行っているように思えるが、「先輩社員」の言動を抑えられなかったために労災認定につながっている。

 それを踏まえれば、企業としては管理職にハラスメント防止講習を実施しただけでは安心できない。すべての従業員にハラスメントの具体例を周知するとともに、防止の重要性を理解させておく必要がある。さらに、ハラスメントと疑われる行為が行われた場合には被害を最小限に留めるため、迅速に実態を把握し、適切に対応できる体制を整えておくようにしたい。

令和4年11月28日第3378号2面 掲載

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