【主張】紛争多発でコスト増懸念

2019.03.22 【社説】
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 厚生労働省は、企業にパワーハラスメント防止措置の実施を義務化する労働施策総合推進法改正案を国会に提出した。パワハラと業務上必要な指示・命令・叱責の境界線が明確にならないと、見解の相違に基づく労使紛争多発につながるのは明らかだ。改正法施行までのできるだけ早い時期に誰もが分かる簡便な判断基準を示し、経営現場に無用な混乱を生じさせないよう最善の努力を要請したい。

 同改正案によると、パワハラを、①優越的な関係を背景とし、②業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動などにより、③労働者の就業環境を害すること――と定義した。事業主は、労働者に対する言動に「必要な注意」を払うよう努めなければならない。

 近年、違法性判断をより難しくする法整備がめだっている。非正規労働者の処遇格差に対する不合理性判断が典型的である。このため労働契約法第20条の不合理性判断を争う労使紛争が多発する傾向にあり、社会的コスト増に結び付いている。

 本紙報道で取り上げたメトロコマース事件(3月11日号5面)を例にとると、1審の東京地裁と東京高裁の間でさえ不合理性判断が大きく異なった。企業としては、最高裁判断を待たなければ対処できないことになる。

 パワハラ紛争も違法性判断がより難しい分野と考えられる。たとえば、社会福祉法人県民厚生会事件(静岡地判平26・7・9)をみると、労働者の精神疾患が労災認定された一方で、上司の指示・叱責は精神的・身体的苦痛を与えたとは認められないなどとして、パワハラ行為が否定されている。

 職場で日常的に行われる上司から部下への指示・命令・叱責などが、双方の微妙な見解の相違によっていちいち紛争に発展するようでは混乱が拡大し、企業の生産性にも悪影響となりかねない。若年者の育成など教育訓練に支障が生じてしまう恐れもある。

 厚労省は「指針」を明らかにするとしているが、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」が、すぐに判断できる簡便なツールを用意できるかがカギとなる。

平成31年3月25日第3202号2面 掲載

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