【主張】パワハラ防止策は慎重に

2018.04.26 【社説】

 厚生労働省はさきごろ、パワーハラスメント防止強化策を明らかにした。セクシュアルハラスメントやマタニティーハラスメントのケースを参考にして、新たに事業主に措置義務を課す内容である。ただし、ガイドラインで取り組むべき具体的対策を示し、一定程度定着した段階での義務化を考えているようだ。

 パワハラは、セクハラやマタハラと比較し、その判定がさらに難しくなる。行政指導の対象とするなら、判定基準を明確化したうえ十分な時間を掛けて周知するとともに、可能な限り対象を絞り込むべきである。対策強化によって、職場の上下関係や人間関係に支障を来すようなことがあっては困る。

 パワハラとは、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を越えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為を指す。

 しかし、実際に判定するのは簡単ではない。たとえば、上司が部下を退職させるため、誰でも遂行可能な業務に就かせるのはパワハラだが、経営上の理由により一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせるのは該当しないという。「退職させるため」か「経営上の理由」かは、外形上そう簡単に判定できるものではないだろう。

 都道府県労働局に寄せられた職場のいじめ・嫌がらせに関する相談(パワハラ以外も含む)は増加傾向にあり、平成24年度以降は全ての相談の中でトップとなった。嫌がらせ、いじめ、暴行を受けたことによる精神障害の労災認定も増加傾向にある。

 パワハラの増加を見過ごせないのは明らかで、いずれは対策を強化し、行政指導の対象とする必要もあろう。大前提として、誰にでも分かる簡易な判定基準を示し、十分周知する必要がある。

 個人の受取り方によっては、業務上必要な指示や注意または指導を不満に感じてトラブルに発展しかねない。その後の社員教育やコミュニケーションに支障を来すようなことになっては、逆に生産性を阻害してしまう。まずは境界線の明確化に力を注いでほしい。

掲載 : 労働新聞 平成30年5月7日第3159号2面

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