【主張】地域限定社員増で難局逃れとは

2013.06.03 【主張】
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 07年、第1次安倍政権当時、再チャレンジ指示策を掲げ、通常国会は、労働契約法の新設やパートタイム労働法改正など労働関連法案6つが上程され、労働国会の異名を冠された。そして第2次安倍政権も経済の立て直しのため、大胆な雇用制度改革を打ち出すべく、首相自らが議長となって、産業競争力会議で議論を進めている。4月23日の会議でその大綱が固まったが、労働界から反発の強い「金銭解決制度」はまたも日の目をみず、その代わり企業側の意向にそって正社員の成長産業への転職を後押しする施策が中心になるもよう。もっとも同会議は閣僚・企業経営者17人で構成されており、気炎を上げても公労使で構成される労働政策審議会で法案作りに入るのだから、労働側がすんなり受け入れるとは思えない。

 ただ、経営側が解雇ルール緩和の切り札と位置付けていた「金銭解決制度」を棚上げしているだけに、雇用制度改革が成就する可能性も否定できない。改革の中心になっているのは、地域限定社員しばりの緩和である。マスコミでは、限定正社員制度と称しているところが多いが、文字どおり地域や職種を「限定」して採用している社員で、企業が持つ労働契約によって包括的に認められている、「個別同意を求めず発動することができる人事権」が制約される。その典型が、転勤命令だ。ただし、「近時の判例は、勤務の場所につき、明確な合意がない限り、勤務の場所の特定を否定する傾向にある」(石嵜信憲弁護士)。とはいいながら、一筋縄にはいかない。本紙5月27日号6面報道によると、一連の緩和策について、労働界はこぞって反対している。

 厚生労働省では、限定正社員について、採用・解雇ルールなどを整備して普及を図る方針という。地域から撤退しても解雇しにくい限定社員を同地の成長産業への転職に促すため(前出6面報道では成長産業の創出は手つかずのままという)現在、再就職の難しい労働者を対象に用意されている労働移動支援助成金を大幅拡充して大企業にも適用する(安倍首相)と早くも具体的腹案を明らかにしているが、先走りの感が強い。

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平成25年6月3日第2923号2面 掲載

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