安全・安心な職場の実現へ/橋本社会保険労務士事務所 代表 橋本 和隆
平成29年3月末で厚生労働省を定年退職し、千葉県習志野市で開業した。厚生労働省では労働基準監督官として仕事をしたが、入省当時、死亡災害など重大災害や労働問題のトラブルが多くの事業場で発生していることを知り、驚いたことを覚えている。
また、事業主がその事後処理に多大なコスト、時間、労力を費やしたことも知り、「安全・安心な職場の実現」は、私の生涯の役割であると思うようになった。
「安全・安心な職場の実現」とは何か。その答えを一言でいうと「労働災害やトラブルゼロの職場」である。
労働災害やトラブルのない働きやすい職場が構築されれば、優秀な人材が確保・育成でき、その優秀な人材により、全体の生産性が向上していくという好循環が生まれ、企業を継続的に発展させることができる。
しかし、現在、日本経済は、新型コロナのウイルス感染症の影響で一進一退の状況であり、一部に設備投資に持ち直しがみられるものの、依然として厳しい状況が続いている。そのため、企業経営の一層の効率化が求められ、安全対策経費や労務管理対策経費(以下「安全・安心投資」という)の削減を検討している実情がある。
実は、安全・安心を疎かにすることが企業の発展を阻害し、安全を重視することが、結果的に生産性や品質が向上する効果があることに我われは気付かないといけない。企業を継続的に発展させるため、設備投資ともに、安全・安心投資も継続することが必要である。
それは、平成12年の中央労働災害防止協会の「安全対策の費用対効果」において、投じた直接の安全対策費は、その2.7倍に当たる経済効果があり、生産性向上の効果もあるとの試算が示されていることからも証明されている。
また、安全・安心な職場を実現するには、安全・安心投資の継続に加え、「企業トップと労働者との方針共有」、すなわち、風通しの良い職場、働きやすい職場にすることも必要である。
企業トップと労働者が方針を共有する取組みが功を奏し、労働災害やトラブルゼロの企業がある。一方、風通しの悪い企業では、危機管理意識が希薄で改善提案が企業トップに伝わらず、重大災害やトラブルが発生していることからも明らかである。
今後、安全・安心な職場の実現へ向けて、安全・安心投資の継続や、企業トップと労働者との方針共有の取組みが、多くの企業で行われるよう、元労働基準監督官の社会保険労務士として微力ながら尽力したい。
橋本社会保険労務士事務所 代表 橋本 和隆【千葉】
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