【主張】岸田政権への期待高まる

2021.10.07 【主張】
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 自民党総裁選で岸田文雄衆議院議員が選出され、日本経済の先行きに期待が高まっている。同氏の政策方針によると、「新しい日本型資本主義」の創設に向け、経済において成長と分配の両面の達成をめざすとしている。「成長なくして分配なし」との考えの下で、まずは数十兆円規模の国債発行による財政出動を行うと述べた。事実上、一旦は、緊縮財政の旗を降ろし、大規模な経済刺激策を実行できれば、デフレ脱却の引き金となる可能性がある。

 同氏は、今後、「新しい日本型資本主義構想会議」(仮称)を設置し、ポストコロナ時代の経済社会ビジョンを策定、これに基づいて「国民を幸福にする成長戦略」と「令和版所得倍増のための分配施策」を進めるという。

 これまでの規制緩和・構造改革などの新自由主義的政策は経済の体質強化と成長をもたらしたものの、富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の間で分断も生んだ。成長のみ、規制緩和・構造改革のみでは現実の幸せにはつながらないとの見方である。

 しかし、まず手を付けるべきは経済成長であることははっきりしている。分配するにしても、パイの拡大がなければ、単なる現状の取り合いとなってしまい、決して国民の幸福にはつながらない。日本は、長期間にわたって経済成長せず、分配する新しいパイが形成されなかった。結果として、持てる者が優位となった。緊急事態への対応だけではなく、一定の経済成長が達成されるまでは積極的に財政出動し、経済を活性化しなければ「新しい日本型資本主義」は画餅となりかねない。

 日本は、バブル経済崩壊からリーマン・ショック、東日本大震災を経て、長期にわたるデフレ経済に悩んでいる。賃金・所得は増加せず、結果としてGDP(国民総生産)もほとんど横ばいで推移してきた。東日本大震災後には復興増税を実行し、逆噴射となった。世界の主要国では、この間に大きく国民の生活水準を高め、GDPは何倍にもなっている。

 先立つものがなければ、何も始まらないことが「失われた30年」ではっきりしている。

令和3年10月11日第3324号2面 掲載

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