【道しるべ】災害への対処 知識・経験ナシではすまされない

2011.11.15 【ひのみやぐら】
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 ひと昔以上も前になろうか、ある労務安全担当スタッフから「この仕事は“敗戦処理”のようなもの」と嘆かれたことがある。「死亡者が出て、重苦しい雰囲気のなかで事後対応に追われたりすると、空しい気分になってしまうし、やりきれない」とも語っていた。労働災害による年間死亡者数が2000人をはるかに上回っていた頃だったから、口ぶりには一時だけの愚痴こぼしでないと思わせるところがあった。恐らく、それまでの安全への取組みが瞬時に無に帰してしまったと感じるような苦い出来事が何度かあったのだろう。

 経験された方ならご承知だろうが、ひとたび災害が発生した後の措置というのは、多項にわたって迅速な対処と細心の配慮が求められる。

 主な事項を挙げてみても、

① 初動対応(被災者救出、救急処置、病院搬送、災害の事実把握・記録、社内連絡、緊急ミーティング)

② 被災者等対応(家族等への連絡、病院派遣、情報収集、入院時および退院後ケア、被災者死亡への対応、労災補償手続き)

③ 官庁対応(労基署等への連絡、現場検証、事情聴取、災害報告届出)

④ 災害防止対応(災害調査、要因分析、対策立案、改善実施)――などがあり、後に損害賠償をめぐる示談交渉が控えていたりもする。

 災害数の大幅低下もあって、最近はその種の事態に直面することも往時ほどではなくなった。が、それとともに他方では前記諸対応に関する知識や実務経験の浅さが懸念され、万が一の場合の適切な対処を不安視する向きが少なからず出てきている。建設関係者のあいだでは「何をどうしていいのか分からないスタッフや統責者もいるぐらいで、業界全体で解決すべき問題にもなっている」という。

 こうした状況に応えるものの1つとして先月、『災害発生時の対処法』(野中格著)が小社から刊行になったが、一読して分かるのは、表題にある業務が単なる後始末ではないこと。災害防止措置に劣らぬ重要性が伝わってくる。

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平成23年11月15日第2150号 掲載

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