【主張】拡大する解雇不法行為論

2016.12.05 【社説】
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 権利濫用とされた解雇が不法行為となり、企業の損害賠償義務を容認する裁判例がめだっている。厚生労働省の検討会の中で、近年の判決の特徴として注目され始めた(本紙11月7日号1面に既報)。典型的には、解雇がなければ将来的に得られたであろう賃金相当額や慰謝料を逸失利益に含めて損害賠償請求するケースだ。支払いが命じられる金額が膨らむ可能性もあり、今後の裁判動向に注意する必要がある。

 解雇権濫用で無効判決が下りた場合、解雇から判決までの間、労働契約が続いていたとみなして、その間の賃金請求権が発生すると考えるのが一般的だった。従来までの多くの裁判例では、この考え方に沿って、不就労だった期間の賃金支払いを命じている。

 これに対し、解雇が企業の故意・過失による不法行為と認定されると、利益や名誉を侵害したとして損害賠償義務が発生する。この不法行為論に立つと、場合によっては労働者としての地位確認を経ずに逸失利益の支払いが命じられる。

 派遣添乗員の解雇の正当性を争った東京地裁判決(平成17年1月25日)を例にとると、解雇が権利濫用で無効・違法としたうえ、原告に対する不法行為を構成すると指摘した。解雇がなかったなら、以後相当期間にわたって勤務していた可能性が高いとし、解雇と相当因果関係がある賃金相当額を逸失利益として支払うよう命じている。併せて精神的損害として慰謝料の支払いも認めた。

フリービット事件東京地裁判決(平成19年2月28日)では、解雇でどれだけの具体的な損害を被ったかが検証されるべきとの考え方を示した。その際、再就職するまでの経済的損失を見積もる必要があるなどとしている。

 解雇無効時の金銭救済制度における解決金の考え方や水準にも影響する可能性のある判決動向とみることも可能で関心が集まっている。

 しかし、権利濫用による解雇が当然に不法行為となるものではないとされている。不法行為の成立要件をよく検討したうえで、判決を下すよう望みたい。

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平成28年12月5日第3091号2面 掲載

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