【ひのみやぐら】安衛担当者は「街路樹」

2019.10.10 【社説】
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 交通の安全と快適性を確保する、日陰と美しい景観をつくる、災害を軽減する、環境を浄化する――これらは都市部で増えている「街路樹」の役割だと説くのは、農学博士で森林インストラクターでもある渡辺一夫さん。最近書店で見かけたある雑誌に氏のそんな一文があり、以前どこかで聞くか読むかした気がする…などと思いながら読み進んでいるうちに、「安全衛生担当者」の役割とどことなく似ているな、と直感めいた思いにとらわれてしまった。

 それらについて述べた部分を要約して並べると、葉陰で歩行者や車を直射日光から遮って高温から守り、歩道と車道を分離して歩行者の安全を守ったり心理的な安心感を与えたりする。また、防風や防雪だけでなく火災の延焼を食い止め、大地震で倒れた建物を街路樹が支えて避難経路を確保するような災害軽減機能もあり、あるいはまた大気汚染物質を吸着して環境を浄化する役割もある、などとある。

 恥ずかしながら科学的根拠を知るところではないが、おそらく同インストラクターの指摘はそのとおりであろう。そのうえで、歩行者や自然災害を受ける側の人間を「労働者」と置き換えてみると、「守る」側の存在という意味で安全衛生担当者の姿が浮かんだのだ。緑の少ない都市空間に美しい景観をつくるとした部分も、快適な職場環境を形成するという似通った見方ができまいか。

 意図せず自ら直接媒介機能を発揮する街路樹と、職場での教育や啓蒙活動を通じて効果を期待する安全衛生担当者という違いはあるものの、人を守る役割という意味では一緒である。

 何気なく過ごす普段はその存在意義を感じにくい面もそっくりだ。騒音や排ガスに満ちた都心の幹線道路沿いに黙って佇むその光景は、職場の就労環境を見つめながら、同僚の安全と健康のために働く担当者の姿とだぶる。

 静かに、だがしっかり誰かのためになっている「街路樹」が安全衛生担当者なのだ。近年、発信力のように「力」と付く言葉が氾濫しているが、あえて大げさに振る舞う必要はない。静かでも確実に、安全確保の方向に舵を切っていくことがあなた方の役目である。

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2019年10月15日第2340号 掲載

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