【主張】業務委託は明確に区別を

2016.10.31 【社説】

 大手建設会社で業務委託契約に基づいて施工図面の作成業務に当たっていた男性を、実質上同社の「労働者」と判断する地裁判決があった(本紙10月10日号3面既報)。男性は、長時間労働で過労死したため、同建設会社の安全配慮義務違反を認め5000万円を超える高額の損害賠償を命じた。

 扱いを間違えると、業務委託契約者が労働基準法上の「労働者」とみなされてしまう可能性が高まり、様ざまな使用者責任が発生してしまう。アウトソーシングの拡大が見込まれるなか、要注意事項に浮上してきた。思わぬ高額損害賠償を請求される前に、裁判例に沿った業務委託に徹するよう警鐘を鳴らしたい。

 同建設会社では、業務委託契約者を、まるで外部からの「出向者」のように扱っていたという。仮に高い専門性を有し大幅な裁量の下で業務を行っていたとしても、同建設会社の社員の一員として打ち合わせに参加させたり、名刺や作業着の貸与は十分考慮したうえで行うべきだ。

 判決では「施工図面作成を行う被告(同建設会社)の従業員と同じ立場の出向者と位置付けた上で管理し、被告の場所的拘束の下に業務に従事させ、報酬も業務の成果ではなく労働の対価としての実質を有する」などと述べた。

 労基法上の「労働者」か否かについては、業務委託などといった契約形式のいかんにかかわらず、労務提供の形態などを勘案し、実質的に使用従属関係が存在するかどうかで判断されるのが、確立した立場である。

 具体的な判断要素としては、①仕事の依頼に対する諾否の自由度、②職務遂行上での指揮監督の有無、③時間的・場所的拘束性の有無、④代替性の有無、⑤報酬の労務対償性、⑥事業者性の有無などが挙げられる。

 裁判例では、自己所有トラックによる運送業の運転者、証券会社の営業嘱託従事者などがある。近年では、交通事故の多いバイク便ライダーの労働者性も問題となった。ルールを度外視した安易な業務委託契約は、結果的にコストダウンに結び付かない可能性がある。

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掲載 : 労働新聞 平成28年10月31日第3086号2面

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