明確なルールで魅力向上/匠社会保険労務士事務所 所長 重谷 一郎

2018.12.09 【社労士プラザ】
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匠社会保険労務士事務所 所長 重谷 一郎 氏

 中小企業の中には、賃金や就労のルール等を明確に定めていない企業が多い印象を受けるが、こういった企業に潜むリスクを通して、ルール等を定めることの意味について考えてみたいと思う。

 未払い賃金請求等の労務トラブルが分かりやすい例であるが、ルールがなければ会社としては何も反論できない。これはとても怖いことである。今はインターネットでいろいろな情報を簡単に入手できる時代であると同時に、労働者保護の観点から労働問題の解決手段も多様化しているため、問題が発生した時は企業にとって大きな負担になるであろう。

 かつて浸透していた「会社にお世話になっている」という社員意識は、今は希薄化しているため、労務トラブルはいつでもどこでも起きると考えるべきである。ルールを曖昧なままにしていることは、経営が無防備な状態にあるということであり、その結果として、経営リスクを高め、場合によっては経営基盤を揺るがすことにもなりかねない。

 また、今は圧倒的な人手不足である。かつてのように、非正規社員を多く雇い人件費を抑える経営を行おうにも、非正規社員やパート採用ですらままならない。コストのような短期的な視点ではなく、パートや非正規も含む全社員にできるだけ長く働いてもらい、どう育成するかという長期的な視点がむしろ重要である。

 就労のルールを整備し、等級制度、評価制度、賃金制度、賞与制度、退職金制度といった人事制度をきちんと設け、自社で長く働き続けた場合のキャリアビジョンや少し先のステップを示すことができなければ、人材は定着しない。働く側はいくらでも仕事を選べるため、「自社の魅力を社員に示す」様ざまな工夫が企業には求められるのである。

 このように、賃金や就労の明確なルールは、いざという時の労務リスクを抑えるだけではなく、「自社の魅力を高めるツール」として大いに利用することで優秀な人材が定着し、その能力の最大限の活用が可能となるのである。

 最後に、中小企業では、「業務的な余裕がない」「専任の社員がいない」等の理由でその分野に未着手でいる企業が多いのも事実であろう。当然ながら、相応のスキルを持った専任の社員を抱えるとなると、それなりの人件費を負担しなければならず、なによりもそのような人材を確保することが難しい。この課題の解決策は、少しでも早く良い社会保険労務士と出会うことであろう。

匠社会保険労務士事務所 所長 重谷 一郎【岐阜】

【公式webサイトはこちら】
http://www.officeshigetani.com/

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平成30年12月10日第3188号10面 掲載

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