【主張】二重就職の拡大へ指針を

2016.04.11 【社説】

 経済財政諮問会議の議論の中で、労働者の「兼業・副業」を促進すべきとする意見が注目されている。就業時間以外の時間を、労働者がどのように使おうと原則自由であり、就業規則で規制を掛けてもその有効性には限界があると解するのが通説・判例で、考え方はほぼ固まっている。

 厚生労働省では、以前から「マルチジョブホルダー」に対する雇用保険制度の適用を中心に検討を続けてきたが、未だ結論に至っていない。非正社員や低賃金層の拡大が社会問題化している現在、雇用保険制度のあり方を含めた二重就職の適切な拡大へ向けたガイドライン提示は一つの有効なアイデアであり、早急に対応すべきであろう。労働者の職業能力の幅広い活用にもつながる。

 主に低所得層で兼業・副業を志向する労働者が増加傾向にあるという。総務省の調べでは、2012年時点で全雇用者の6%、370万人ほどがその希望を訴えている。しかし、兼業・副業を認める制度を有する企業は、14年の中小企業庁調査でわずか4%にとどまり、積極的にこれを奨励する企業は皆無だった。

 しかし本来、就業規則で兼業・副業を規制するのは簡単ではない。企業の権限が及ばない私的な時間であり、当然、労働者はその時間を自由に利用できるからだ。企業が規制できるのは、本来の労務提供に支障を来す場合に限られる。所定労働時間後の長時間にわたる兼業によって疲労が蓄積し、次の日の本来業務に専念できないなどといった場合が中心である。

 裁判では、就業規則に反して企業の許可なく行われた二重就職への懲戒処分を認めなかった例がある(名古屋地判・橋元運輸事件)。労務提供に格別の支障が生じない程度の二重就職と判断したためだ。

 社会的中間層が崩壊しつつあるなか、兼業・副業の促進は、賃金収入の増加を図るための一手段ではあろう。企業としては、奨励はしないとしても裁判例に沿って、本来業務に支障がない限り認める方向で軌道修正すべきである。ただし、長時間労働を助長しないよう十分注意する必要がある。

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掲載 : 労働新聞 平成28年4月11日第3060号2面

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