【ひのみやぐら】心のキズのケアが大切に

2018.01.26 【ひのみやぐら】
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 労働災害の悲惨さは、そのとき負った被害だけではない。心のキズとして、後から深く脳裏に焼き付いてしまうこともある。本誌好評連載中の「本当に役立つ!こころの耳」では、昨年の8月15日号で「事例紹介52 作業中の事故で外傷後ストレス障害」を取り上げている。食品製造業に勤務する43歳の女性が作業中、機械に左手を巻き込まれ左手首を切断し、錯乱状態に陥った。事故後、1カ月を過ぎてからも左手を巻き込まれた状況が頭に浮かび、打ち消すことができなくなったという。女性は、医師から外傷に伴う精神的ショックとの関連が疑われるとして外傷後ストレス障害、受傷後抑うつを含む精神症状と判断されている。

 自身の経験でいえば、労働災害ではないが交通事故を目の当たりにしてしまったことがある。対向車線を走っていた車が脇道から侵入してきた車と衝突した。もう30年ほど前の話だが、車の先端がグニャッとへこんだ瞬間は、今でも昨日のことのように覚えている。実際に災害に遭った当事者でなくても、現場に居合わせただけで相当ショックを受けるものなのだ。

 労働災害に遭った被災者を含め、周囲にいた関係者の心のケアをどのように行うべきか――。今号、特集2では大正大学の廣川進教授に、企業が実施すべき対応についてポイントを示していただいている。廣川教授は、従業員への迅速なメンタルケアが重要になってくると指摘。発災直後から計画を立てて実施すべきとした。

 具体的には、影響を受けた従業員の状態を把握する。少数の場合は全員面談、多数では、アンケートでストレスチェックを行う。当事者や目撃者などストレスチェックの高得点者には、看護保健職などのスタッフがストレス軽減対策を助言し、職場などの集団に対しては情報提供をする。また、1カ月後をめどにケアの継続か終結か判断を行う。こうしたケアが十分でないと従業員のうつ病発症や職場へ不満の噴出など正常な労働の復帰が難しくなるという。

 まだまだ情報の少ない領域で、苦慮している企業も少なくないそうだ。本稿が関心の高まりに貢献できれば幸い。

平成30年2月1日第2299号 掲載

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