【ひのみやぐら】万が一のために「延命措置」

2015.05.01 【社説】

 危険体感教育の「安全帯ぶら下がり体感」に参加したことがあるだろうか。体験者ならお分かりいただけると思うが、とにかく苦しい。腹部が圧迫され、息ができなくなる。

 現在、厚生労働省は世界基準の「ハーネス型」への転換を進めている。この訓練の目的もハーネス型の優位性を確認するために行うわけだが、依然として現場での主役は「胴ベルト型」だ。「罰則規定がない現状においては、現場は胴ベルト型安全帯による宙づりを想定して対応することが必要である」とみなとみらい労働法務事務所の菊一功所長は指摘する。

 万が一、胴ベルト型安全帯をしていたとしても、墜落してしまった場合はどうすればよいか――。菊一所長が提唱するのが「足元確保式延命措置」だ。多くの被災者は、墜落から約10分で呼吸困難などにより、意識不明になる。レスキューの到着が早くて10分としても、現場の確認や準備など被災者が宙づりの状態から救出されるまで約30分は要するという。その間、呼吸困難で低酸素脳症とならないために、息のできる姿勢を保ち救助を待つというものだ。いざというときになったら、安全帯のD環に装着した「ダイニーマスリング」を伸ばし、足に引っ掛けるようにして、足元を固定する。腹部に圧迫がなくなり、頭も上になることから呼吸が確保される姿勢がとれるというわけだ。

 当然、被災者が自力で行うため、意識、体力が残っていないと難しい。パニックを起こさず、落ち着いて対処するために、普段から訓練を実施することも必要だ。限られた条件での延命措置だが、救える命は救わなければならない。

 なお、本誌読者専用サイトでは菊一所長の解説動画を配信している。

ジャンル:
掲載 : 安全スタッフ 平成27年5月1日第2233号

あわせて読みたい

ページトップ