【主張】減税より賃上げで成長へ

2025.06.19 【主張】
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 「減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要」と謳う骨太の方針が6月13日、閣議決定された。持続的・安定的な物価上昇の下、年1.0%程度の実質賃金上昇を定着させ、国民の所得と経済全体の生産性を向上させるとしている。中小企業・小規模事業者の賃上げを促進するため、適切な価格転嫁などの支援策を総動員する――などとしているのが心強い。

 2年連続で5%を上回ったとはいっても、賃上げにかかる取組みはまだ道半ばだ。純粋な改善分は3%台に過ぎず、消費者物価指数の伸びと大きくは変わらない。物価変動を加味した実質賃金は、現在もプラスに転じ切ってはいない。

 昨年、毎月勤労統計調査で実質賃金指数(現金給与総額)が前年同月比プラスだったのは、6~7月と11~12月の計4カ月。いずれも賞与を含む特別に支払われた給与の伸びが大きく影響しており、1%に達したのはそのうち6月(1.1%増)のみだった。年平均では0.3%のマイナスに留まっている。

 今年に入ってからはむしろ状況が悪化しており、最新の4月分の結果速報は前年同月比1.8%減に。まだ速報の段階であるとはいえ、春の賃上げによるめだった改善はみられていない。そうしたなかでまもなく、「2020年代に全国平均1500円」を目標とする最低賃金の審議が始まる。令和5年の段階で影響率(改定後に最賃を下回る労働者の割合)が2割を超えていたことを思えば、中小企業には従来以上に生産性向上への公的な支援が求められる。

 物価上昇による家計への影響を減税でフォローする発想は、決して前向きなものにはなり得ない。収入を増やすより支出を抑えようとする方向性は、産業界が希求してきたデフレマインドの払拭と逆行する。一時的な減税や給付金は一時的に個人消費を喚起するかもしれないが、賃金上昇には直接結び付かない。

 人への投資や働き方改革を通じて生産性の向上、持続的な成長をめざす企業において、労使が求めるのは賃金引上げを見送る理由ではあり得まい。

令和7年6月23日第3502号2面 掲載
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