【ひのみやぐら】転倒しにくい身体づくりを
東京労働局がまとめた「労働災害防止対策の取組に係る自主点検の実施結果」では1980事業場に転倒災害防止対策について聞いている(4月15日号データで見るアンゼンエイセイ既報)。設備・装備などのハード面の対策を実施している事業場は72.2%だったものの、骨密度など健康状態のチェックが3.1%、転びにくい身体づくりのための取組みなどは10.1%とソフト面の対策が低調であることが浮き彫りになった。
点検結果では、ハードとソフトの両面を実施している事業場は9.1%と1割にも満たなかった。第14次東京労働局労働災害防止計画では、アウトプット指標においてハード・ソフトの両面から転倒防止に取り組む事業場の割合を2027年度までに50%以上にすることを掲げているが、大きく下回った。
転倒災害の原因として、「つまずき」「滑り」「踏み外し」などがある。一般的に、加齢に伴って筋力が低下し転びやすくなるが、実は何もない平面の床で足が上がらずに、つまずいて転倒するケースが少なくない。さらに足がもつれて転ぶ災害もみられ、必ずしも段差や障害物との接触が原因ではないことが分かっている。
身体が丈夫な年齢のうちは「たかが転倒」と思いがちだが、高齢になると重篤な災害につながる。とくに女性は、骨密度が低下しやすい傾向にあり、転倒した場合に骨折してしまうこともある。骨折の部位によっては、寝たきりになる可能性が考えられ、頭を打った場合は、生命にかかわることも考えられるので、軽視はできない。足が上がらない、もつれる、といった原因の転倒対策としては、身体機能を維持向上し、転びにくい身体づくりをすることが重要だ。今後、取組みの進んでいないソフト面の対策を進めることが必要といえる。
前号のニュース欄では、中災防の作成した「転倒による労働災害防止の取組み好事例集」を紹介している。時間のかからない体操や体力チェック方法などのソフト面の対策について事例を掲載しているので、参考にしたい。転びにくい身体づくりは、生き生きと元気で働くことのできる職場づくりにつながる。