【ひのみやぐら】私的な考えごとで大事故に

2023.10.27 【ひのみやぐら】
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 国土交通省の委託で、社会的影響が大きい貨物自動車などの交通事故を調査分析する事業用自動車事故調査委員会は、令和3年7月14日に山梨県甲州市で起きたトラック追突事故に関する報告書をまとめた。事故原因として、運転者に家庭の事情による心理的なストレスなどがあったとして、上司や同僚に相談できる風通しのよい職場環境の醸成を再発防止策の一つに挙げている。

 トラックが中央自動車道を走行中、渋滞で停止中の乗用車に追突。さらに前方の大型トラックなど計5台の車両が関係する多重衝突事故となった。見通しのよい下り坂の緩やかなカーブを走行中、前方の注意を怠り、渋滞で停止中の車列に気付くのが遅れ、追突したものと推定されている。この事故で乗用車の運転者と同乗者の2人が死亡、1人が重傷、トラックの運転者2人が軽傷を負った。

 この事故の直接原因は、運転者の前方不注意だが、考えごとをしていて集中力を欠いていたためであり、頭の中にあったのは家庭の問題だった。運行管理者によると、事故の1~2カ月前に運転者から離婚や持ち家に関する相談を受けていたという。

 交通事故や労働災害の原因は必ずしも一つではないが、この事故の最大因子は、「意識の迂回」によるヒューマンエラーであるといえよう。考えごとや悩みごとにより集中できず、運転中であることの意識が遠のいたわけだ。

 この運転者は離婚や持ち家のことで悩んでいたというが、作業中に恋人との関係、子供の受験、結婚などの私的な考えごとをしていたために労働災害につながったという例が少なくない。とくに出勤前の夫婦ゲンカは要注意といわれる。こうしたヒューマンエラーを防ぐには、報告書が指摘するように上司や同僚に悩みごとが相談できるような職場風土の醸成が重要になる。上司は、日ごろからの声かけやコミュニケーションに配慮が必要だ。

 近年、プライベートな事柄に関わることについては、慎重を要するようになったが、適切な距離を保ちつつ職場の人とは良好な関係を築きたい。とくに管理職ならば、決して無関心であることはないように。

2023年11月1日第2437号 掲載

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