【主張】キャリアドックで人材力

2015.10.19 【社説】

 本紙報道(9月21日号1面)によると、厚生労働省は平成28年度予算において、新たに「セルフ・キャリアドック」(仮称)の普及拡大に向けた予算を計上する方針を打ち出した。助成金の新設や導入マニュアルの作成など、企業に対する総合的な普及支援対策を展開するとしている。

 激しさを増すグローバル競争を生き抜くためのわが国の最大の武器は、人的資本蓄積である。変化のスピードが加速化している現状にあって、自己のキャリアのあり方を常に検証し、場合によっては方向転換を図る努力が求められるのは理解できよう。

 本格的な人口減少、労働力不足社会が目前に迫っていることにも配慮しなければならない。企業としては、各種支援策を活用してセルフ・キャリアドックの積極的導入を図り、労働者の能力の陳腐化を防ぐことが重要である。人的資本蓄積により、企業全体としてのパワーアップに力を注ぐべきである。

 労働者自身が勤続の節目や昇進・昇格の際などに定期的に自己キャリアのメンテナンスを実施するのがセルフ・キャリアドックである。一部大手企業はすでに実施しているが、中小企業を含めほとんどは未実施だ。

 アベノミクスは、第2ステージに入り、経済の好循環が回り始めている。日本全体が将来への展望を描き切れなかったバブル崩壊後の時代がようやく終わりを告げ、次の展望へ向かって腰を据えた対策を打ち出す必要がある。

 近年、あらゆる事業やものがインターネットにつながれ、国境のないデジタル空間に膨大なビッグデータが形成されている。これを処理する人工知能が加速度的に進化しつつあり、「第4次産業革命」の時代が到来したといってもいい。

 高い付加価値を生んできた旧来型熟練人材の知識や技能はたちまち前時代的となり、役に立たなくなるだろう。失われた時代を脱した今こそ目線を上げて、未来への投資に精力を傾けるべきである。その選択肢の1つとしてセルフ・キャリアドックを普及させ、変革の時代に合致した人材育成に取り掛かりたい。

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掲載 : 労働新聞 平成27年10月19日第3037号2面

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