【主張】「年功賃金」修正は慎重に

2014.11.03 【社説】

 政府が先ごろ開催した政労使会議で、総理は「年功序列の賃金体系見直し」を共通認識とするべきとの考え方を示した。労働の付加価値生産性に見合った賃金体系に改めることで、働き盛りや子育て世代の処遇改善あるいは非正規労働者の正規化を図るべきとしている。

 概略的にいえば、非正規労働者が多くを占める20~30歳代において相対的に収入が少なく出産や子育てが難しいから、40~50歳代に厚い処遇となっている年功賃金体系を見直せというものだろう。いわば、職業生涯全般を視野において、賃金配分の方法を変更すべきという指摘と受け取ることができる。

 しかし、年功賃金と長期雇用慣行が日本を先進経済大国に押し上げてきたことを忘れてはいけない。長期にわたり将来不安なく、安定的な職業生活が約束されて始めて優れた人材が育ち、企業や国を支える基盤となる。

 年功賃金を否定するということは、極端にいえば年俸制などの成果主義賃金に一本化すべきということと変わりがない。成果主義を徹底すれば、年齢や経験に関係なく配分され、これによって仕事量が多いであろう若年層が恩恵を被る。アメリカの賃金制度を規範としたものといえるが、日本の企業・職場風土にはマッチしないことは実証済みだったはず。

 代表的企業では、すでに年齢給を廃止するか、大きく縮小している。これに代わって、成果給と併せて職能給と役割給を採用し、この3つの賃金要素のバランスを保ちながら運用している。過大な成果給を設定していない限り、年齢や経験に大きく左右される能力や役割の向上によって処遇水準がアップしていくのは致し方ない。

 若年層の出産・子育て環境改善は賃金配分というより、社会政策・制度の問題である。「若年層に配分を」という理由で、これまで築き上げてき労働慣行に大きな軌道修正を迫るのは危険過ぎる。

 企業の実態をみると、自社の現状に沿ったバランスの取れた賃金制度へ向け日々改善に努力しており、これに任せた方がいい。

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掲載 : 労働新聞 平成26年11月3日第2991号2面

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