【主張】増税に抗せない実質賃金

2018.11.09 【社説】
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 政府の菅義偉官房長官は、消費税率10%への引き上げに向けて、「思い切った駆け込み反動減対策を講じていきたい」と述べた。法令通りに消費税増税を実施する方針を示唆したものだが、賃金上昇率はまだ増税に耐え得る状況にはない。増税によって賃金や雇用情勢に大きなマイナスの影響が生じる可能性が高く、来春には再度凍結を決断すべきである。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で、実質賃金指数の推移をみると、上昇の勢いは極めて鈍い。平成27年を100とすると、28年は100.7、29年は100.5である。30年に入ってからは、月ごとに上昇下落がまちまちで、最新の8月の速報値では86.5となり、対前年同期比0.6%のマイナスだった。

 実質賃金とは、いうまでもなく名目賃金指数を消費者物価指数で除した数値である。消費税増税によって2%程度の物価上昇が避けられないとすれば、実質賃金は再び水面下に沈むであろう。アベノミクスによって、ようやくデフレ脱却の入り口まで到達したのに、増税によって再び閉じられてしまう。

 わが国のGDPを構成する最大の項目は、家計の消費活動を示す「民間最終消費支出」であり、全体の6割程度を占める。賃金上昇がままならず消費が著しく減退している異常な状態をデフレだとすれば、実質賃金の下落はGDPの縮小につながる。GDPの規模が長年に亘って停滞してしまった結果、世界におけるわが国経済の優位性が大きく後退してしまった。これ以上の相対的劣化は避けなければならない。

 一方で、わが国の一般会計税収額の実情をみると、決して停滞していない。22年からほぼ一貫して増収が続いている。直近3年の数値を示すと、28年度55兆円、29年度57兆円、30年度59兆円となった。59兆円は、バブル崩壊直前の2年度60兆円に匹敵している。税収額は、増税に依らずとも景気拡大に伴って伸びているのは明らかである。

 消費拡大がわが国経済の最大の課題となっているのに、これを狙い撃ちにする消費税増税は認められない。

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平成30年11月12日第3184号2面 掲載

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