【主張】雇用者所得増は良いが…

2019.02.21 【社説】
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 厚生労働省の毎月勤労統計調査の不正で、実質賃金が下方修正されてしまった。景気回復期には、実質賃金より総雇用者所得を重視すべきではあるが、アベノミクスがスタートしてすでに6年が経っている。実質賃金の上昇による生活の安心感、消費マインドの拡大に結び付いていないと判断でき、未だ道半ばというほかない。ここで、政府が緊縮財政路線に大きく傾けば、消費マインドは再び頭打ちとなろう。

 現政権のスタートとともに実施した日本銀行による異次元金融緩和が雇用情勢の大幅改善をもたらした。失業率が低下し、わが国は完全雇用状態に到達したとみて良い。しかし、失業率低下に伴い改善すると推測されていた賃金水準は未だ低迷を続けている。

 原因としては、本紙が従来から指摘していたとおり、労働市場へ新規参入した労働者約350万人の賃金水準が必ずしも高くないためだ。新規参入した労働者は、女性や高齢者が多く、短時間勤務がめだっている。このため、総雇用者所得が明確に伸びている一方で、個々の労働者の平均である実質賃金には逆にマイナスの圧力が掛かった。

 通常国会で、野党はアベノミクスで実質賃金が改善していないと追及、これに対し与党は総雇用者所得が増加しているとして成果をアピールした。国民としては、どちらの見解を正しいとみるべきかが問題である。

 賃金水準を回復して消費拡大を図り、インフレ率2%を目標(好循環の達成)にしたアベノミクスの当初の志を前提とすると、実質賃金の低迷は看過できない。賃金水準の低い新規参入者が実質賃金を押し下げているという構図は、異次元金融緩和後6年が経過した現時点では受入れ難い。

 新規参入により総雇用者所得が上昇していることは、経済政策の一つの大きな成果として十分評価されるべきだが、その後に甘さがあった。実質賃金を引き上げて消費マインドを喚起する的確な政策を打てなかったことになる。

 プライマリーバランス黒字化をめざした緊縮と増税により、さらにブレーキがかかる懸念がある。

平成31年2月25日第3198号2面 掲載

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