【主張】長過ぎる5年の消滅時効

2019.06.06 【社説】
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 厚生労働省が設置している専門家の検討会によると、賃金等請求権の消滅時効が現行の2年から5年に延長される可能性が高まった(本紙5月27日号1面既報)。令和2年4月施行の改正民法に沿ったものだが、労働基準法の特別法としての位置付けからいえば、再考が必要である。生産性向上が課題となっている今日、紛争の増加や負担増が見込まれる法改正は、控えるべきである。記録保存義務期間の3年程度とすべきだ。

 本紙報道によると、専門家の検討会において、賃金等請求の消滅時効は、「民法に合わせて5年」が共通認識となっている模様である。中間的な3年、4年とする特別な理由が見出せなかったとしている。しかし、一般法に合わせて最長の5年に延長した場合、労使関係の安定と生産性の側面から疑問といわざるを得ない。労使紛争の発生確率が高まるばかりでなく、対象期間が長期化すればするほど労使間での合意が困難となり紛争自体が長引き、非効率となる恐れがある。

 日本商工会議所は、「時間外の見解の相違などで…企業側と労働者側の主張が違う場合など、2年間であれば確認がある程度できますが、5年も経ってしまうと、責任者が異動や退職になってしまい、誰にも確認ができないといった懸念があります」との見方を表明している。

 経団連も「人事異動、転勤、退職ということで管理職だけではなく、当時のそこのセクションにいる人全員がいなくなっていることも考えられ…正確な記録の確認が困難」とした。仮に勤務データの保管期間を延長すると、サーバーの改編などで1社当たり数千万円程度の費用の追加発生が見込まれるという。

 労基法第109条では、賃金台帳などの記録保存義務期間を3年間と定めている。保存義務期間が長いほど監督指導上の必要性に応えることができるが、使用者の負担を考慮して「3年間」に抑えた経緯がある。消滅時効が5年となれば、その差2年間はデータとして曖昧となろう。

 法改正に当たっては、労働政策審議会で再度、慎重に検討してもらいたい。

令和元年6月10日第3212号2面 掲載

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