労使紛争の未然防止狙う/中小企業経営労務研究所 所長 岡本 孝則

2017.07.02 【社労士プラザ】
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 横浜で社労士事務所を開業し、36年になる。ご縁がありお付き合いの始まった企業の永続的な存続・発展に寄与したいとの思いから、「経営者と従業員との懸け橋」となれるよう努力してきたつもりである。

 近年は労使間トラブルの相談が大きな割合を占め、各々の事案が複雑で、長期化する傾向にある。

 経済情勢の影響、労働環境の変化、インターネットの普及などにより、働く人たちの権利への意識変革は著しく、企業への帰属意識も希薄になってきている。

 労使間のトラブルは、原因にかかわらず労使ともに不快感を覚えるもので、長期化すればその不快感は当事者のみならず周りにも影響を及ぼしていく。

 すなわち、職場環境の悪化による従業員のモチベーション低下や経営者の集中力不足、経営意欲の減退となって企業の発展を阻害する大きな原因になるのだ。

 こうしたトラブルによって会社が被る時間、労力、コスト、ストレスは甚大で、これらをなくす、または少なくするだけで会社の経営効率は増大するのである。

 問題が起きた時、中小企業の場合は直接社長と当事者が交渉するのは避け、直属の上司が窓口になるなどワンクッション置くことにより過度に感情的にならないようにする。双方とも完全に満足のいく解決は難しいが、良く話を聞いて譲歩できる点を探し、少しでも気持ちが落ち着く「落としどころ」をみつけていくことが重要だと考える。

 私は法律と感情の両面から考えた落としどころをご提案している。とくに退職時の悪感情はその後の大きなリスクとなる場合が多いので注意が必要だ。

 昨今不当解雇の金銭的解決が政府で議論されているが、その趣旨は、政府の成長戦略と働き方改革にある雇用の流動化である。日本では解雇規制が厳しく、労働者の労働市場への移動が進まないためだ。

 しかし、解雇の金銭化が明確にされると、金銭を支払えば職場復帰を諦めさせることができるという安易な考え方が広がり、強引な解決を試みてさらにトラブルが大きくなってしまうことも予想される。

 「解決時のソフトランディング」が深刻なトラブル回避の有効な手段だと考えている私が最も懸念するところである。

 今の時代、労務トラブルのリスクは常にあるが、その芽を小さくし、未然に防ぐことが労使の信頼を強固にし、対外的なイメージアップと組織活性化による企業の発展につながるものと考えている。

中小企業経営労務研究所 所長 岡本 孝則【神奈川】

【公式Webサイトはこちら】
http://www.chukeirou.jp/

平成29年6月26日第3118号10面 掲載

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