【主張】構造把握迫る賃金差公表

2022.07.28 【主張】
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 一般事業主行動計画等に関する省令が改正され、「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられた(関連記事=男女賃金差の公表義務化 正規、非正規など3区分で 301人以上企業が対象 厚労省・改正女性活躍関連省令施行)。常用労働者300人超の事業主は、現在の事業年度が終了してから概ね3カ月以内に、平均年間賃金の男女差(%)を「全労働者」「正規雇用」「非正規雇用」別に明らかにしなければならない。岸田文雄総理大臣が「この夏には施行できるよう準備を進めます」と語ったのは5月20日の第7回新しい資本主義実現会議で、2カ月足らずでの実現となった。3月決算の企業にはかなりの余裕があり、適切な準備を進めたい。

 比較の対象は平均年間賃金であるため、諸手当や賞与が含まれる。管理職の女性比率からして基本給に差が出るのはまず当然として、扶養手当があれば月2万~3万円程度の差が付くし、時間外労働に男女差があるケースも多いだろう。転勤範囲などによるコース別管理の存在も、大きなインパクトを持ち得る。

 源泉徴収簿から平均値を導くだけなら機械的な作業で済むが、3つの数値だけで“均衡度”を判断されないためには、説明欄をうまく活用したい。そもそも働きやすさのニーズに応える措置(短日・短時間勤務、残業・転居転勤の免除など)の多くは、結果として差異を押し広げる方向へ働く。人事部門としては、自社の諸制度の意図を踏まえ、伝えるべき実情をアピールする必要がある。

 たとえば、特定の役職や等級における差異を追加で示す。大卒35歳や入社10年目に的を絞り、総合職のみの平均値を算出するなども検討の余地があろう。会社として賃金差ゼロをめざすポイントがどこにあるのか、対外的なメッセージを発信したい。

 年齢や職位階層別の男女構成比は、数十年間の人事運用の結果であり、急な修正は叶わない。単純な平均値の公表を求める背景には、一律の算定方法を適用し、企業間比較や企業内の経年比較を可能にする意図があろう。穿った見方をすれば、パブリックコメントも募らずに行われた改正は、改めて自社の賃金を構造的に把握するよう迫る措置にも感じられる。

令和4年8月1日第3363号2面 掲載

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