【主張】厳しい経済好循環の達成

2022.03.24 【主張】
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 2022年春季労使交渉の山場となる金属労協集中回答日を終え、トヨタをはじめホンダ、日産自動車が正式に満額回答となった(=関連記事)。前年は、要求を下回る回答や賃上げを見送る企業がみられたことを考えれば、前年を上回る好結果となるのは明らかだ。しかし、全体の賃上げ率を3%台に乗せることはやはり困難である。経済の好循環達成にはパワーが不足している。

 最近では、日本の賃金がバブル経済崩壊以降、数十年にわたって上昇せず、他の先進国との比較で最低水準にあることが盛んに報道され始めた。岸田政権では、「人への投資」を柱とした政策をスタートし、働く者への配分を厚くすべきと訴えた。今季労使交渉の目標として、業績が新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準を回復した企業については3%を超える賃上げ率を掲げている。

 しかし、現実には、賃上げ率3%に乗せることが可能なのは、好調な一部大手企業に限られ、大多数を占める中堅・中小企業はそのような状況にはない。全体の賃上げ水準は、本紙で専門家が今年の年頭に予想した2%前後となる可能性が高い。

 仮に、全体の賃上げ率が2%台前半で終われば、結局、経済の好循環が実現しなかった数年前の状況と同様となる。安倍政権時の14年労使交渉から2%台となり、最高2.38%となったものの、国民の消費拡大につながらなかったのは周知の事実である。

 まして、現在、エネルギー高騰や円安基調の進行による物価高が、好ましくないインフレを招来している。家計は、引き続いて消費を抑え、防衛色を強めることは明らかだ。岸田首相のいうとおり経済の好循環達成への起爆剤として、少なくても近来の賃上げ水準を上回る3%台が求められるが、好調な一部大手企業に限られるのであれば、多くを期待できない。企業は、個々の支払い能力に応じた賃上げを行っており、責任を転嫁することもできない。

 日本は、長い低賃金状態から一刻も早く脱しなければならないことは明白である。新たな経済対策の実行を待つしかない。

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令和4年3月28日第3346号2面 掲載

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