【主張】賃上げへ向け環境形成を

2021.11.11 【主張】
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 岸田政権の力が試される2022年春季賃上げ交渉の前哨戦がスタートしている。自民党政策バンクによると、成長戦略によって賃金への配分を拡大し、国民の所得水準を持続的に向上させると明言した。そのために、賃上げに対する税制支援や下請取引への監督を強化するというが、目新しい対策を示しているとはいえず、今のところ公約達成に期待は持てない。大切なのは、企業が自ら賃上げし得る経済環境の形成である。

 安倍政権時においても、「官製春闘」と称されるほど春季賃上げに勢力が注がれた。結果的に、15年の賃上げ率2.38%が最大で、その後徐々に先細り感が強まり、新型コロナウイルス感染症の影響が強かった21年には1.86%にまで低下した(関連記事=【賃金調査】民間主要企業賃上げ 厚労省/令和3年 平均妥結額5850円に 賃上げ率で1.86%)。この数値は、10年程度以上前のデフレスパイラル時代と同水準である。

 いかに強力な政権でも持続的高賃上げが困難な課題かが分かる。まして、賃上げ支援税制や下請取引監督の強化といった既存の対策が功を奏するとは思えない。前年度より給与を増加させた場合にその増加額の一部を法人税から税額控除できる中小企業向け所得拡大促進税制度が以前から運用されているし、企業内最賃の引上げに対する助成金支給制度もある。長期にわたり運用してきたものの、全体の賃上げや中間層の所得増には一向に結び付かなかった。

 政権が賃上げ要請を強める「官製春闘」やわずかな税制支援では、長期の固定費負担増となる人件費への付加価値配分を拡大するとは到底考えられない。

 カギを握るのは、企業経営者が将来投資に対する有利性・必要性を感じ、意欲が持てる経済環境の形成である。30年間以上も民間需要が低迷するデフレ続きでは、明らかに投資リスクが高過ぎる。

 岸田政権では、小手先の対策を弄するだけでなく、経済全体を浮上させる強力なマクロ政策の実行に全力を投入する必要がある。安倍政権時代の中途半端な成長戦略では、公約達成はおぼつかない。

 高賃上げを実現し、日本経済を救うための時間的余裕は少ない。早急に大胆な補正予算執行に着手すべきだ。

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令和3年11月15日第3329号2面 掲載

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