【道しるべ】化学物質ばく露 潜在症状の有無に注意・警戒を

2012.10.01 【ひのみやぐら】
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 あれは、本誌の題号(雑誌名)が『安全スタッフ』に変わる昭和50年代前半のことだったろうか。東京の化学工業会社で六価クロムによる土壌汚染と人的被害が発生・発覚し、大問題となった。

 この事件では、金属防錆処理剤として使われていた六価クロムの粉末・粉じん吸入によって従業員が肺がんなどで死亡したほか、鼻中隔穿孔(鼻腔を左右に分けている骨板に穴があく)が多数認められている。被災発覚時、それまで現場では“鼻の中に穴があいて一人前”などと言われていたと聞いたことも、生々しい記憶として残っている。

 そう思い出したのはほかでもない。いま“第二のアスベスト禍”ではと問題視されている印刷会社従業員の胆管がん発症に、往時の状況と重なる印象を持つからである。

 発端となった大阪での労災請求事案を見ると、校正印刷を専門としていた会社では有機溶剤を含む洗浄剤によって機械などに付着したインクを落とす作業を繰り返していたが、従事していた作業員13人の胆管がん・胃がん(1人)発症、7人の死亡が確認されている。「地下室の通風が不十分な屋内作業場洗浄作業を行っていた…洗浄剤として大量の1,2-ジクロロプロパンを使用、消費していた」などの可能性があるというのが調査に当たった厚生労働省の見解である。その後の1万8131事業場を対象とした通信調査では、胆管がんに関する情報が22事業場(発症者22人、死亡12人)から寄せられ、この中には経営者4人も含まれていた。業務との因果関係については目下究明中であるが、発症状況は尋常でない。

 また、有機溶剤中毒では、手のしびれ、強い疲労感や倦怠感、頭痛、めまいなどが自覚症状としてあるそうだが、化学物質を取り扱う危険性(リスク)への問題意識の有無が早期善処に影響を及ぼしたのでなないか、とも想像する。いずれにせよ、再発防止の観点からいえば、事業者・作業者とも化学物質ばく露による症状に関心を持っての注意・警戒をぜひとも、である。

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平成24年10月1日第2171号 掲載

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