コロナ禍と在籍出向の活用可能性/弁護士 飯島 潤

2021.06.27 【弁護士による労務エッセー】
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1 はじめに

 新型コロナ不況により、企業は忍耐の時期が続いています。

 2020年以降、雇用調整助成金を活用した、休業に注目が集まっています。もっとも、休業が長期間に及んだ場合、労働者の実務経験が蓄積されず、モチベーションが低下してしまうという弊害が生じます。

 そこで、雇用調整と従業員の実務経験を両立させる方法として、在籍出向の活用が考えられます。この方法は、従業員間の「ジョブシェア」ではなく、企業間の「雇用シェア」といえます。さらに、2021年2月に産業雇用安定助成金が創設されたことにより、在籍出向に注目が集まっています。

 もっとも、自社で完結する休業の場合と異なり、在籍出向の場合は他社(出向先)の存在が前提となるため、企業として何を検討すべきかが分からないことも想定されます。

 そこで、本稿では、在籍出向の要件を整理した上で、その活用可能性を考えます。

2 在籍出向の定義・目的

 在籍出向とは、労働者が自己の雇用先の企業に在籍したまま、他の企業の従業員となって相当長期間にわたって当該他企業の業務に従事することをいいます。在籍出向と区別するものに、配置転換、転籍、労働者派遣があります。なお、労働者が出向する場合には、次の図法のとおり、出向先との間で新たに労働契約を締結する(出向元・出向先との間で二重の雇用関係になる)ことになりますので、出向に際しては労働条件明示義務(労基法15条)が発生しますが、「出向元が出向先のために代わって行うことも差し支えない」(平成22年版「労基法コンメンタール上」231頁・労務行政)と解されています。

 在籍出向の目的は、次のものがあります。

① 子会社・関連会社への経営・技術指導
② 従業員の能力開発・キャリア形成
③ 雇用調整
④ 中高年齢者のポスト不足対策

3 出向を実施するために必要な要件

(1)出向契約:出向先との関係

 まず、企業が出向を行おうとした場合、出向先を探した上で、出向先との間で出向契約を締結することが必要です。

 グループ企業間の出向の場合、出向先を探すことは不要ですが、グループ企業外に出向先を求める場合、出向先を見つけることが一つのハードルになります。この点、厚労省は、マッチング支援として(公財)産業雇用安定センターの利用を提案しています。

(2)出向の要件:労働者との関係

ア 出向命令権の存在

 通常、労務提供先の企業が変更すること(A社に入社した社員が、出向によりA社以外の企業の指揮命令下で勤務すること)は当然には予定されていませんので、出向により労務提供先の企業を変更するためには、同意等の明示的な根拠が必要であると解されます。

 最高裁判例(新日本製鐵(日鐵運輸)事件・最二小判平成15年4月18日労働判例847号14号)は、①就業規則に業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり、②労働協約である社外勤務協定に、出向の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金その他の労働条件の処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられている事実を認定した上で、当該事案においては、使用者は労働者の個別的同意を得ずに出向命令を発することができると判断しています。なお、この事案は、出向元の業務のうちの一定部分を協力会社である出向先に業務委託することに伴い、同業務に従事していた労働者に出向を命じたものです。

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