【主張】上限時間設定で有効打を

2016.10.17 【社説】

 厚生労働省が「特別条項付き36協定」の規制強化に乗り出した。わが国企業における長時間労働抑制に向けて、真っ先に手を付けなければならない課題といえるが、ようやく見直しがスタートしたというのが実感である。

 特別条項の締結には、現行においても細かい規制があるものの、肝心な労働時間数に上限がないという”欠陥”がある。上限設定の動きには、当然、使用者側からの圧力が掛かると思われるが、政府全体の重要課題に上っている今がチャンスである。「官邸主導」のパワーを借りて実現に漕ぎ着けたい。

 現行上、特別条項を締結するには、「特別な事情」の発生が予想される必要があるとともに、年間最大6カ月までという制限も付いている。

 「特別な事情」とは、一時的・突発的に発生する業務のことで、たとえば予算・決算業務、ボーナス商戦における繁忙、納期のひっ迫、大規模クレームへの対応、機械トラブルなどを想定している。

 しかし、こうした「特別な事情」は、企業一般で広く発生する可能性があり、これだけで長時間労働抑制は期待できない。確実な「重し」となるのが延長時間の上限設定である。

 特別条項における時間外労働締結時間(特別延長時間)をみると、1カ月で「70時間超80時間以下」が36%、「80時間超100時間以下」が16%、「100時間超」も6%ある。1年単位では、何と「1000時間超」に設定している企業もみられるほどだ。とくに大企業での特別延長時間が長くなる傾向にあり、ブラック企業化を内在している。

 最近の司法処分事案をみると、特別条項付き36協定を結んでいた福島県の製造会社が、1日最大8時間、1カ月最大148時間の時間外労働を行わせていたケースがあった(8月に書類送検)。設定した特別延長時間をもオーバーして摘発されたわけだが、結果としてとてつもない長さの時間外労働の強要につながっている。

 上限時間設定を中心とする「特別条項」の規制強化は、長時間労働抑制の有効打となろう。

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掲載 : 労働新聞 平成28年10月17日第3084号2面

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