【主張】唖然とする大企業の違反

2015.07.27 【社説】

 東京労働局は、資本金79億円、従業員数7500人を数える東証一部上場の㈱エービーシー・マートを労働基準法違反の疑いで東京地検に書類送検した。ごく初歩的な労働時間規制違反を繰り返していたもので、上場企業としてのコンプライアンス状況に唖然とするばかりだ。

 同社の違反内容をみると、東京の池袋店では、法定労働時間の1週40時間を超えた時間外労働を特定の4週間において1人100時間程度行わせていた疑い。また、原宿店では、36協定で規定した限度時間である1カ月79時間を超えて、1人月100時間程度の時間外労働を行わせた。

 そもそも36協定の届出を履行していなかったり、協定した限度時間を超えて時間外労働させるなどは、極めて初歩的な労基法違反である。法律の専門家が在籍しているはずの上場企業の違反行為とはとても思えないし、決してあってはならない。そもそも上場に当たっては、あらゆる法令を正しく理解し、遵守するよう求められているはずで、公正競争の大前提である。

 同労働局は、実は2カ月ほど前にも、資本金86億円、従業員数3000人の東証一部上場の㈱大庄を是正勧告無視で書類送検している。違反容疑は、36協定の限度時間である1カ月77時間を超えて、1人90時間程度の時間外労働を行わせた疑いであり、エービーシー・マートとほぼ同様だった。

 率先してコンプライアンスを向上させ、あらゆる企業の模範とならなければならない上場企業がこの体たらくである。本来、上場企業は企業倫理や社会貢献のあり方が問われるもので、最低労働基準は当然にクリアしていなければならない。

 政府による労働規制緩和が進むなか、影響の大きい上場企業による労基法違反は見過ごすことはできない。世論の動向によっては、今後断行しようとしている各種改革のブレーキともなりかねない。都道府県労働局による取締り強化は当然として、上場企業自らも、労働者を苦しめる労基法違反を即座に中止してもらいたい。ブラック企業撲滅の第一歩でもある。

掲載 : 労働新聞 平成27年7月27日第3026号2面

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