【主張】求人倍率1倍回復も内容に不安

2014.02.03 【社説】

 アベノミクス効果によって、経済界では賃金カーブの維持だけでなく、「底上げ」に当たるベースアップの実施を公言する企業も出てきた。もっとも、その内容は多種多様であり、家庭形成層に当たる年齢層だけを対象とするものが多いように感じられる。

 こうした雰囲気が影響したのか、労働力市場も活況を示しているようだ。やや旧聞に属する観があるが、昨年11月の有効求人倍率は前月より0.02ポイント上昇し、6年1カ月振りに1.00になった。厚生労働省は「安倍政権の経済効果が表れた」と評価し、一般紙の一部では求職難から脱皮した、とはしゃいでいるムキもあった。しかし、内容をみると必ずしも手放しで喜べる状況ではない。

 都道府県別では、最も高い東京都の1.46倍に対し、最も低い沖縄県は0.58倍と半分以下の数値でしかない。加えて正社員に限ってみると、0.63倍に過ぎず、依然として市場は氷河期を脱し切れていない。

 有効求人倍率は、求人・求職の有効期限(2カ月間)の求人数を求職者数で除して算出する。単純に考えれば、その数値が1倍になったのだから、いちおう安心できる。しかし、求職者はともかく求人者は適材適所の人材を求めており、1.20倍程度への回復によって労働市場はバランスが取れると解されている。

 求職者にしても不安は大きい。厚労省は昨年9月に「若者の使い捨て」が疑われる企業への重点監督を実施した。いわゆるブラック企業の実態を抉り出す画期的な政策である。その結果は、監督実施企業(5111事業場)の実に82%(4189事業場)で何らかの法令違反があった、と予想どおりというか惨憺たる結果となった。調査から漏れた事案を考慮すれば、全事業場が真っ黒というわけだ。

 くわしい事例が公表されているが、「賃金が約1年にわたって支払われていなかったことについて指導したが、是正されていなかった」など信じ難い内容もある。生活給も無いのに働き続けたまことに不思議な事案である。こうした企業が山ほどあるので、就職には細心の注意が必要だ。

掲載 : 労働新聞 平成26年2月3日第2955号2面

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