【主張】病院の断続的労働に警鐘

2016.09.19 【社説】

 千葉県と埼玉県の県立病院で、労働基準監督署長の許可を得ないまま医師や看護師に宿日直勤務を行わせていたことが発覚した(本紙8月29日号3面既報)。医療機関における宿日直勤務は以前から問題視され、重点的な監督指導が行われてきた。昼間の医療業務が夜間に継続しているとみなされる場合は、当然、許可の対象外となる。医療機関としては、基準に沿った勤務態勢を整えて許可を受ける「経営努力」を惜しんではならない。このままだと、労働基準法違反として再び社会問題に発展しかねない。

 宿日直勤務は、いわゆる断続的労働とされ、労基署長の許可を得ることによって、割増賃金の支払いなど通常の労働時間規制から適用除外される(労基法第41条第3号)。守衛、学校の用務員、ビル警備員などが典型である。

 これに対し、常に患者対応を迫られる医師や看護師の宿日直勤務には特殊性がある。許可基準によると、通常勤務から完全に解放された後であることが条件となっている。夜間は、病室の巡回、異常患者の医師への報告、要注意患者の定期検脈など軽度の業務や短時間業務に限られる。

 従って、急患診療、入院、死亡、出産への対応など昼間と同様の勤務が続き、十分な睡眠が保障されない場合は許可の対象外となり得る。基本的には、泊まり込む医師、看護師の数と急患の来院頻度などを含めた患者数との関係を改善していく必要がある。

 埼玉県の場合、同県立3医療機関では許可を受けていたが、唯一、循環器・呼吸器病センターに限っては許可が下りなかった。しかし、同センターは不許可となった後も宿日直勤務を継続していたという。限られた医療スタッフで救急患者などに対応する必要があったためだ。高度専門医療を担える医師を早期に増員することも困難だった。

 患者の生死にもかかわるだけに、確かに簡単に割り切れない面はある。しかし、労基法違反は犯罪である。勤務態勢が整わなければ、断続的労働として扱うのではなく、交代制の導入、所定労働時間への組込みなどで対処するほかない。

掲載 : 労働新聞 平成28年9月19日第3081号2面

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