判例学び紛争解決手助け/久保田社労士事務所 久保田 利彦

2012.09.03 【社労士プラザ】
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 平成19年4月1日に「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律(ADR法)」が施行された。これに伴い、特定社会保険労務士制度が発足、裁判外における個別労使紛争のあっせん代理が可能になり、5年が経過した。

 特定社会保険労務士になるためには、一定の研修を受講し、試験を受けて合格しなくてはならない。「なぜ受験するのか?」と問われると、もちろん「社労士の職域拡大」が表向きの答えかもしれない。

 しかし、本当の意味は、日頃から事業主や労働者と接している労働問題の専門家である社会保険労務士が、一連の紛争解決手続きの全体像と実際の解決事例を知っていることによって、紛争を未然に防いだり、解決に導いたりする助言ができる点にあると思う。

 以前より事業主から個別労使紛争の相談を受けることがあったが、当時は就業規則の整備や実務書式の充実を中心とした予防法務が主な仕事だった。そして、トラブルに発展したら弁護士にバトンタッチすることが多かった。しかし、紛争解決手続きのノウハウを学び実践が始まると、守備範囲は、予防法務にとどまらず、事後対応までへと拡大した。

 このため、個別労使紛争の相談を受ける初期の段階から、弁護士と同じ思考で相談を受けなくてはならない。

 具体的には、要件事実、弁論主義、立証責任等の民事訴訟法の考え方・手続き方法をベースにした上で、顧客から相談内容を詳しく聞き、紛争の解決に導いていく準備をする必要がある。

 例えば、事業主から「整理解雇をしたい」と相談を受ければ、まず、整理解雇の有効性を判断する4つの要素(経営上の必要性があるか、解雇回避努力をしているか、人選の合理性はあるか、労使間での協議は行われているか)がどの程度満たされるのかを早急に検証する必要がある。そして、これらを証明する証拠があるか否かも確認しなくてはならない。

 相変わらず個別労使紛争は多く発生し、当所にも相談が時々寄せられる。今後も特定社会保険労務士として判例や解決事例等の研修を積み重ね、実際の場に生かすことによって依頼者の期待に応えたい。

久保田社労士事務所 久保田 利彦【静岡】

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平成24年9月3日第2887号10面 掲載

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