【主張】特例事業で割増賃金不払いとは

2012.06.11 【主張】
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 東京労働局がこのほど明らかにした「平成23年の定期監督結果」によると、商業、接客娯楽業で4割の事業場が、違法残業を行っていた。常識外れのコンプライアンス(法令順守)意識の希薄さには、予想したとおりとはいえ、改めて驚かされた(本紙5月28日付2面参照)。

 両業種は、第三次産業であること、特例事業場が圧倒的に多いという点で共通している。特例事業場とは、労働基準法第40条の定めるところにより、常時10人未満の小規模事業場に適用される優遇措置だ。両事業に加えて映画演劇業・保健衛生業は、法定の週40時間が、特例として週44時間に緩和されている。

 商業、接客娯楽業では、若年労働者が多く、離転職を繰り返し、腰掛け就労的な労働実態がある。結果として労基法への関心も薄い。雇用主である使用者自体も、法令順守などどこ吹く風といった調子なのではなかろうか。

 調査によると、商業で労働時間違反が43.8%、割増賃金不払いも29.7%と多く、接客娯楽業も順に、39.5%、38.0%と似たような高率の違反状況だった。

 常識的に考えれば、一般事業場に比べて、週4時間も法定基準を優遇されているのだから、時間外割増賃金不払いなどあってはならないこと、といえよう。同局は、基本的な枠組みと適正な管理体制を徹底する方針で臨んでいくとしているが、立入調査の過程で「商業など小規模事業場を対象としたが、事業主の法令知識の希薄がめだった」と振り返っており、是正指導は微に入り細を穿つ必要がある。相当な時間がかかろう。

 そうであっても、フリーターなどワーキングプアを吸収しやすい事業だけに、賃金台帳が適正に調製されているかを徹底的に調べてほしい。自由主義経済下では、小企業といえども甘えは許されない。

 かつても今も「名ばかり店長」問題で名をはせている業界であるだけに、小規模企業だけではなく、チェーン店も繰返し臨検監督する必要がある。規模の大小に関係なく、企業体質がそのようなコンプライアンス精神に欠けている気配を感じているからだ。

平成24年6月11日第2876号2面 掲載

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