【主張】裁量性高い働き方推進を

2018.04.12 【社説】

 国会の予算委員会において裁量労働制のデータ不備問題が議論された際、本欄では、データ不備自体は決してあってはならないが、裁量労働制の意義や適用拡大を否定すべきではないと主張した。そして、労働基準監督のさらなる監視強化、取締強化を進めて本来の趣旨に則った的確な適用を図ることから再スタートすべきであると訴えた。

 このほど、野村不動産に勤務する労働者が過労死労災認定を受けたあと、東京労働局が特別指導を実施し、同社に対して是正勧告したとする事案が一斉に報道された。一部では鬼の首を取ったかのように、過労死を招く乱用であり改めて適用対象拡大への反発が強まりそうだなどと指摘している。

 過労死した労働者は、転勤者の留守宅を賃貸に回すいわゆるリロケーションサービスを行っていた。入居者の募集から始まり契約、仲介業者との折衝、トラブル対応などが業務の柱だったという。長時間労働、休日出勤が重なって体調を崩し、一旦休職したが復職後に自殺した。過労死労災認定を機に、昨年12月に東京労働局が調査に入り、同労働局長が直接同社社長に指導を行った。

 裁量労働制の適用対象は、企画、立案、調査、分析の業務であって、大幅に労働者の裁量に委ねる必要があり、しかも業務遂行の手段や時間配分などの決定に関し会社側が具体的に指示しないことが条件となっている。

 同労働局は、個別具体的に調査し、対象に該当しない業務に就かせていたと判断して是正指導している。労働時間のみなし効果が生じないことから、割増賃金不払いなどの違反となった。

 リロケーションサービスの営業担当者が、裁量労働制に該当しないことは当然である。同社が法令を承知していなかったか、あるいは意図して違反していたかが問題となってたとしても、裁量労働制自体の意義や適用拡大政策を意図的にクローズアップし、阻止するのは経済・社会への背信に等しい。高度な裁量性を前提とする労働システムの拡大政策はこれに屈せずに前進させてもらいたい。

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掲載 : 労働新聞 平成30年4月16日第3157号2面

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