社会保障の正しい利用を/すずきた社会保険労務士 行政書士事務所 代表 鈴木 孝之

2018.03.25 【社労士プラザ】

すずきた社会保険労務士
行政書士事務所
代表 鈴木 孝之 氏

 会社に就職したら原則として厚生年金や健康保険に加入することは、多くの人が知っていることである。しかし、それら社会保険は、実は複雑でとても分かりづらい。

 たとえば、健康保険組合は、いわゆる協会けんぽに比べ保険給付や保険料負担において有利であったり、また、国保組合に加入している自営業者などが会社勤めをするときに、会社として健康保険に加入することなく社会保険に加入する「適用除外承認」があったりする。

 最近では、「保険料が高く、手取りが減るから社会保険に入ると従業員が辞めてしまう」といった相談や、「会社の保険料負担も重いからどうにかならないか」といった質問を受けることもよくある。

 そんな中、2017年9月24日の某新聞に「ダミー会社で保険料逃れ」という記事が掲載された。東京のタクシー会社が香港に設立したダミー会社を通じて従業員に給与の一部を支払い、本来国に納めるべき保険料を低く抑えていたという内容だ。

 タクシー会社の従業員は、採用後、同社社長が代表を兼務する香港の会社に転籍。この会社からタクシー会社に出向する形で日本国内で働いていた。従業員は、基本給の支払いをタクシー会社から受け、歩合給や深夜手当などの給与は、香港の会社名で受けていた。そのため、基本給のみを基に計算した保険料を納め、本来納めるべき保険料の支払いを逃れていた。

 この記事の掲載前、私も似たような事案に遭遇した。上記、香港の会社の部分を日本のコンサルタント会社とし、そのコンサルタント会社に転籍した従業員は最低限の保険料になるように基本給を低く設定して社会保険に加入、元々働いていた会社には、個人事業主としてその会社の店舗の一部を間借りしているという形をとり、そこで本来の仕事をして、コンサルタント会社から得ていた給与の不足分にプラスし本来の給与相当額になるよう個人収入を得ていた。結果、コンサルタント会社の低賃金を基に算定された額で保険料を支払っていた。

 本来の給与に見合った保険給付が正当に受けられず、将来もらえるはずの年金も少ない保険料分のものしかもらえなくなってしまうような行為を平気で行ってしまう会社は、本当に従業員のことを考えているのだろうか。このようなことが平気で起こり得ることになると、もう本当にめちゃくちゃである。

 正当に頑張っている会社が正当に評価される社会保障制度であってほしいものだ。

すずきた社会保険労務士 行政書士事務所 代表 鈴木 孝之【東京】

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掲載 : 労働新聞 平成30年3月26日第3154号10面

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