【主張】染み付いた“デフレ思考”

2017.11.13 【社説】

 先ごろ開催された経済財政諮問会議において、3%賃上げ実現に向けたシナリオが描かれた。最大の障壁とされたのは、大手企業経営者が日本経済の先行きと自社の長期的経営に十分自信が持てず、中長期的なコスト負担増となる賃上げに踏み切れないでいることにあるという。

 バブル崩壊以降、多くの経営者はコストカットに専念し、デフレ対応に追われたのが実情だった。しかし現在、日本経済の局面は大きな転換期に差し掛かっている。経営者は、コストカットを至上命題とした”デフレ思考”から脱却し、積極的な投資拡大姿勢に転換する必要がある。雇用制度の改革以前に、20年以上にわたって染み付いてしまった思考様式から自らを解放すべきである。

 同諮問会議では、大幅賃上げに踏み切れない要因を数多く指摘した。たとえば、日本型雇用慣行関連では、「終身雇用維持のためベースアップに積極的になれない」「正社員の解雇規制が厳しい」などの要因が挙がった。政府への要望事項も「労働分野の積極的な規制緩和」「人材投資に対する税制優遇措置の強化」など様ざまとなっている。

 しかし、全体を俯瞰すると賃上げへの厚い壁となっているのは、経営者自身の”デフレ思考”ではないだろうか。過去の景気後退の経験から経営行動がリスク回避的になり、内部留保を厚めに確保する志向が強まってしまった。バブル崩壊以降、リーマン・ショックを経て、20年以上にわたり、経営者の行動はコストカットと縮小再生産を強いられる”デフレ思考”に凌駕されてしまい、脱却が困難となっている。

 経営者は、現状の経済実態を直視すべきである。経常利益は、75兆円と過去最高を更新中である。名目GDPは543兆円となり拡大を続けている。日経平均は3万円をめざし始めた。

 経済の好循環が途切れて、再度の経済縮小へ向かうか、さらに拡大するかは、制度改革を実施する以前に経営者の思考様式の変革に掛かっている。3%賃上げの達成に向けて、”デフレ思考”払拭に努めてもらいたい。

ジャンル:
掲載 : 労働新聞 平成29年11月13日第3136号2面

あわせて読みたい

ページトップ