資産形成支援で人材定着/よつば社会保険労務士事務所 石川 みふみ

2015.08.10 【社労士プラザ】

よつば社会保険労務士事務所
石川 みふみ 氏

 総合型厚生年金基金(以下、基金)の解散が進んでいる。国の厚生年金の一部を代行し、基金独自の上乗せ給付を行ってきた基金は存続のための財務基準をクリアできず、その多くがすでに解散を決めている。

 もともと分かりづらい基金の仕組みに加え、降ってわいた解散問題に振り回されている加入企業だが、一義的には、基金解散により消失する上乗せ給付部分を補てんするのかしないのか、いずれかの選択をしなければならない。しかし、この問題において重要なのは、基金解散が労使関係再考の契機になり得るということである。それは基金の代替制度の検討過程で、退職給付制度を大きく見直す企業が増えているからだ。

 新制度の多くは①退職金制度(DB)+②企業の拠出と労働者の運用(DC・投資教育)+③労働者の自助努力支援(マッチング拠出・選択制DCなど)の3本柱である。公的年金の衰退を背景に、老後の資産形成は個人の自助努力に託される時代となった。しかし、老後期間の長期化に伴い「豊かな老後」に必要な資金は増加する一方で、一個人が一生のうちに成し得る資産形成には限界がある。また、企業の財源にも限りがあり、いまさら退職金を倍増することなど到底現実的ではない。

 旧来の日本における労使関係の典型は、「使用者主体」の終身雇用だった。新しい退職給付制度3本柱は、「労使共同」による老後の資産形成作業であり、まさに「新時代の終身雇用」ともいえるのではないだろうか。これだけの労働力流動化のなか、中小企業にとって優秀な人材の定着が未だ重要な経営課題であることは明らかで、評価処遇や人材開発制度の充実により、自社における長期キャリア形成を可視化することに加え、労働者の老後の資産形成支援を行うことは、その課題に少なからず寄与するものと考える。

 新しい長期雇用を支える3本柱の実現には持続可能な退職金制度、企業年金の導入および労働者への自助努力支援について、制度の設計から運用までトータルでサポートできる人材が必要だ。

 その役割こそ、これからの社会保険労務士が担うべき使命の一つだと考える。基金解散問題が新しい労使関係の出発点になるのかもしれない。

よつば社会保険労務士事務所 石川 みふみ【大阪】

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掲載 : 労働新聞 平成27年8月10日第3028号10面

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