年金制度は果たして持つか/㈱ブレインコンサルティングオフィス 代表取締役 北村 庄吾

2013.04.01 【社労士プラザ】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

㈱ブレインコンサルティングオフィス 代表取締役
北村 庄吾 氏

 最近、年金関係の取材を多く受けている。その1つは、マクロ経済スライドに関するものである。安倍政権がめざす、2%のインフレターゲットは、賃金もともに上昇すれば、現役世代には結構なことである。しかし、引退世代が受け取る年金に関しては、今後、年金の価値が下がっていくマクロ経済スライドが実施される。この仕組みは、物価や賃金の上昇率に連動させてきた年金額を、物価等の上昇率から平均寿命の延び等を数値化したもの(厚労省の試算では0.9%)で調整する仕組みである。物価が2%上昇した場合にも年金は1.1%しか上がらないため、実質的に価値が落ちていく。インフレに対応する公的年金のメリットを奪う仕組みである。

 さて、年金制度を考えてみよう。税と社会保障の一体改革の流れのなかで消費税の引上げが決まった。これを実現しないと、基礎年金の国家負担2分の1の実現はおろか、受給資格期間を10年にするという改正年金法の施行もできなくなる。しかし、5%程度の消費税の引上げで年金制度が維持できるとは思えない。次のデータをみていただきたい。1年間の年金の支払額は平成22年で52兆円。これは、平成元年度の約22兆円の2倍を超えている。高齢化の進展で年金受給者が増加したためである。

 この財源の中心は、私達が支払う保険料である。現在の年金制度は、世代間扶養という、現役世代の保険料に、国が一部負担して、引退世代の年金の支払いに充てる方式を取っている。昭和35年には、現役世代11人に対して、引退世代は1人という割合であったが、現在2.5人で1人、平成62年には1.3人で1人を支える構図になる。

 結論からいえば、公的年金制度は世代間扶養の仕組みでは維持できないと考える。直近では、支給開始年齢を67歳にする等の改正で対応すると思われるが、それでは、根本的な解決にはならない。社会保険労務士として残念なのは、年金や医療保険制度など私達が扱う制度が頻繁に改正され、それも、給付減額、保険料アップという改悪の流れになっていることである。

 国は、抜本的な年金改革と、少子化対策に本気で取り組まなければ、いずれ、年金制度はもちろん、医療や介護の仕組みも崩壊しかねない。

㈱ブレインコンサルティングオフィス 代表取締役 北村 庄吾【東京】

【公式webサイトはこちら】
https://www.e-brain.ne.jp/

関連キーワード:
    平成25年4月1日第2915号10面 掲載

    あわせて読みたい

    ページトップ
     

    ご利用いただけない機能です


    ご利用いただけません。