DXで“属人化”から脱却/福岡社会保険労務士法人 代表 村里 男樹

福岡社会保険労務士法人 代表 村里 男樹 氏
給与計算や総務代行の依頼が増えている。属人化した業務を担っていた担当者の離職に伴うものだ。連動して「クラウド」「DX」の認知度も高まっている。
弊所ではクラウド導入支援を行っているが、「DXのメリット」をあいまいに理解したまま相談に来られるケースが多い。
そこで、DXやクラウド導入で企業がどう変わるかについて、業務効率化、法令遵守・ミス防止、可視化の3つの観点から解説したい。
「業務効率化」については分かりやすい。今まで手作業で行っていたものが自動化できる。たとえば「勤怠」面では、打刻状況から残業時間や労働日数を自動で集計できる。紙で行ってきた残業や年次有給休暇の申請がパソコンやスマホで実施でき、いつ誰が申請・承認したかも確認できるようになる。年休申請に伴い、残日数が自動で減算される。労働条件に応じた自動付与も可能だ。
「給与」面の効率化につながるのはウェブ明細だ。従業員は過去分の給与明細書や賞与明細書をウェブ上で確認できるし、振込作業も銀行データのファイルを添付するだけで済む。「労務」面では、雇用契約書の自動作成が可能になる。また、年末調整の際に必要な申告書関係もスマホなどから回収でき、誰が提出しているかどうかのステータス管理も可能だ。
「法令遵守・ミス防止」につながる点もDXのメリットだ。多くの企業が「打刻時間と労働時間の区別」、「月給の時給換算方法」、「割増の対象になる手当」などについて間違えて理解している。それらを発見し、正しい計算や管理が実施される。視覚的なエラー表示やメール通知により見落としが防げるうえ、API連携対応のソフトを活用すれば入力作業が不要となり、人的ミスが防げる。
「可視化」は、企業にとって潜在的な課題だ。たとえば、部署ごとの残業時間や年休消化率、従業員のスキル管理や過去の評価・給与の状況などは、紙ベースで過去と現在を比較しようとすれば、とてつもなく時間がかかる。
近年、管理体制の複雑化に伴い、「評価制度」の需要も大きく増えている。動機付けや従業員管理において「客観的に可視化された数値」は、経営にとって極めて重要な要素といえる。
以上が、企業がDXを導入する主な目的となる。「自社のどこに課題があるか」を検討すると、DXが答えになるかもしれない。
労働時間の規制が厳格化し、最低賃金の大幅増が続く今、データ収集に時間を使うのでなくデータ分析にこそ時間を費やすべきだ。
福岡社会保険労務士法人 代表 村里 男樹【福岡】
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