「改革」重ね離職者ゼロに/社会保険労務士法人 TENcolors 代表 古川 天

社会保険労務士法人 TENcolors 代表 古川 天 氏
弊法人は2021年、離職率が60%を超えるという、社労士法人として深刻かつ恥ずべき事態に陥った。この状況を真摯に受け止め、自らを省みたうえで、働き方と制度を一気に見直す決断をした。
最初に実行したのは、フルフレックスおよびフルリモートの導入である。退職が続き、採用が追いつかず、苦肉の策として採用範囲を全国に拡大するなかで、リモート勤務環境の整備により社労士有資格者の採用に成功した。
しかし、柔軟な働き方だけでは職員の定着にはつながらないと痛感した。「ここが自分の居場所」と感じてもらえる組織づくりが必要と考え、個人面談のあり方を抜本的に見直した。従来の面談は業務量や労働時間の確認に留まっており、職員の価値観や働く目的はみえてこなかった。
そこで導入したのが1on1ミーティング、通称「カラシル」である。2週間に1度、業務内容には一切触れず、職員の「人となり」に焦点を当てた面談を実施。職員はマンダラチャートを用いて自身の目標を設定し、面談で達成度を報告する。最初は抽象的だった目標も、継続的に自分と向き合うなかで、定性目標、やがて定量目標へと具体化されていった。
このプロセスには、自己理解と自己開示が欠かせず、言語化の力が求められる。「事実を伝えることが関係性を壊すのではなく、本質に向き合うために必要」と繰り返し伝えてきた結果、「事実は事実として受け入れる」という姿勢が徐々に根づいてきた。発言をためらわない雰囲気ができたことで、ミーティングや日常の会話においても活発な意見交換が行われるようになってきたのは、大きな変化である。
加えて2022年には、2週間連続の特別有給休暇制度「スペシャル2ウィーク(S2W)」を導入した。これは14日間完全に業務から離れ、一切の連絡を取らない制度である。期間中は他の職員が業務を引き継ぐため、マニュアル整備が不可欠だった。約8カ月をかけて構築し、現在も毎月メンテナンスを継続している。職員に一定の負担はかかるが、急な退職や休職に備えるために必要な仕組みと位置付けている。S2Wを経験した職員の多くが「改めて自分の働き方を見つめ直す機会になった」と語っており、制度の意義を実感している。
こうした改革の積み重ねにより、同年は離職率が10%まで低下し、2024年にはついに離職率0%を達成。職員の定着が着実に進んでいると実感している。
社会保険労務士法人 TENcolors 代表 古川 天(ふるかわ ひかり)【東京】
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