【ひのみやぐら】衝撃走った熱中症の「罰則」

2025.06.10 【ひのみやぐら】
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 熱中症対策の強化を図った改正労働安全衛生規則が6月1日に施行している。背景には近年、気候変動により夏は尋常ではない暑さが続き、死亡災害や重篤化への増加が懸念されていることが挙げられる。改正では、「罰則付き」になるということで、産業界に大きな衝撃が走った。当然反対の声も聞こえてきたが、本稿を執筆している5月最終週の段階では、一応の落ち着きを取り戻したようだ。

 今回は「罰則付き」ということで注目を浴びたが、もともと熱中症で死亡災害が発生し、書類送検となる事案がたびたびある。多くは「発汗に関する措置」で、安衛則第617条では、「事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない」と定められている。炎天下、工事現場の交通誘導や草刈り作業などで水分補給などをさせないまま作業を行わせて、死亡災害に至るケースが少なくない。詳しくは弊社ホームページ「送検記事」のコンテンツを参考にしていただきたい。

 今回の改正では現場での対応として「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられた。具体的な実施事項は、ニュース欄で取り上げているように通達で明らかになっている。例えば、「周知」では、報告先などが作業者へ確実に伝わることが必要であるとし、事業場の見やすい箇所への掲示、メールの送付、文書配布などを挙げており、朝礼に参加しない人のために複数の手段を講じるよう求めた。

 熱中症での災害は労働者が一人で作業していて管理者が見ていない、気が付かないなどが原因で重篤化や死亡に至ることが多い。災害は管理不足が原因であり、改正は管理の強化を図ったものだ。

 現状、熱中症に対しては、さまざまな用品が発売され、緊急時の処置方法も確立されている。注意喚起により、働く人の意識も随分高くなった。通達を見ると目新しさよりも、「適正に管理をするように」といったメッセージが読み取れる。

 「罰則」という言葉が反響を呼ぶことになったが、重要なのは「正しく管理をする」ことにほかならない。

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2025年6月15日第2476号 掲載
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